漫画家を志して、デビューして、ヒット作を作り、ブームを巻き起こし、作品がアニメ化もされ、憧れの先達たちと肩を並べることにもなり、熱狂的なファンと理解のある編集者と妻と娘と息子に囲まれ――その場所は傍から見れば、全ての願いを叶えた幸福な位置にみえても、それでも、なぜかはみ出してしまう。 人に話せるほどの理由なんてものはない。なんとはなしに、ちょっと表に出て散歩でもするように、そんな気軽さで全てを投げうってしまう。 人というのは、うっかりすると「ハッピーエンド」の枠から飛び出してしまう厄介な生き物だ。 誰しもが自分をもてあましていて、今ある自分と違う自分に、ただ「違う」というだけで憧れ、ついその一歩を踏み出してしまう。 ちょっと違う景色の見たさだけで、今までの全てを壊してしまう。 しかし、その踏み出した一歩の先にはまたなにも待ってはしない。 それまでと同じように、ただひたすら訪れる意味のない「