水田の稲が色を増し、辺り一帯を鮮やかな緑色に染め上げる。 奥には、雄大な日本アルプスの稜線がくっきりと見えている。 日本晴れだ。 山々には雪の白さが残っている。 空の青、鮮やかな緑に、雪の白。 鮮やかなコントラストが、とても美しく懐かしい。 道中の車内からは、見慣れない建物も多く見かけていたので 大規模な再開発が進められているのではないかと、肝を冷やしていたが 帰郷した私を迎えてくれたのは、二十年前と変わらない 唯一無二の景色だった。 ――――ジジジジ。 我が我がとさんざめく蝉の声が、賑やかさを増していく。 容赦なく照りつける陽光が、袖から出た素肌に痛みを与える。 蝉の大合唱と相成って、文字通り"ジリジリ"と肌を焼かれている感覚だ。 だが、それすら心地よく感じてしまうのも日本人の性だろう。 盛夏の訪れと、変わらない故郷。 弥が上にも気分が高揚していく。