自宅で自死する長男と、それを見つけて記憶喪失になる母親――。冒頭、そんなシーンから始まる映画「鈴木家の嘘(うそ)」。2018年公開のこの映画は、脚本も手がけた野尻克己監督(45)が、約20年前に兄を自死でなくした原体験をもとにした作品だ。WHOがこのほど、映画、テレビ制作者向けに、「自殺シーンの描写を避ける」などの12項目を含む「自殺予防の指針」を策定したが、遺族として、映画監督としてどう受け止めたのかを聞いた。 大学を出て映画の仕事をして、色々な作品に関わり、いよいよ自分で作品を手がけようとした時に、自分が描けるものとは何だろうと考えました。ずっと、家族の話は撮りたいと思っていて、すると、多くの人は経験したことがないであろう兄の自死のことが思い浮かびました。一度はやめようと思い、ある時、兄の近況を聞かれて、「兄は交通事故で死んだ」と思わずうそをついてしまいました。 自殺する人は日本だけで