全冠制覇を達成した羽生善治七冠(左下、1996年当時)。藤井聡太二冠(上段㊨)の再現はなるか。豊島将之竜王(上段㊥)、渡辺明名人(上段㊧)らが立ちはだかる 「本当に集中できている時は1分が長く感じる。あの1局もそうだった」。6月の棋聖戦5番勝負の第1局。最終盤で、藤井聡太は深い集中の海に潜っていた。約30手先に現れる局面で、自分の玉はぎりぎり詰みを逃れている―。秒読みの中で読み切り、大きな1勝目を手にした。 対戦相手の渡辺明(36)=三冠=は、その読みの速さと正確さに驚愕(きょうがく)した。「今までトップ棋士同士なら、互いにそれほど変わらない終盤力で戦っている感覚があった。しかし、藤井さんにはそうではない力を感じた」。16年間タイトルを保持し続ける「現役最強棋士」の渡辺をして「未知の感覚」と言わしめた藤井の終盤力。その源となる深い集中について、藤井と同じように語った棋士がいる。