しかし、今、見てみると、トランプは静かだ。独特の手のジェスチャーはこの頃から同じだが、決して声を荒らげず、ゆっくりと話す。「あなたは賢明な女性だ。だが、今回は売り上げが最下位になってしまった。ビジネスとは冷酷なものだ。君はクビだ。ありがとう。家に帰りたまえ」。 言葉遣いも上品で、貴族的な冷酷さがある。もともとトランプはこういうキャラクターだった。 1980年代、レーガノミクスによって証券と不動産のバブルが始まったが、それを象徴する人物は映画『ウォール街』の株取引人ゲッコー(マイケル・ダグラス)とトランプだった。70年代のニューヨークは荒れ果てた廃墟とポルノ・ショップ、ジャンキーと娼婦だらけの街だったが、トランプはそれを高級化していった。潰れたホテルを二束三文で買い取って高級ホテル、グランド・ハイアットとして再生した。ホームレスの村のようになっていたセントラルパークで放置されていたスケートリ
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