ハインツ・コフート 病的な自己愛 前回のジャック・ラカンに続いてハインツ・コフートを紹介する(図1、緑色)。ラカンと同じく、ジークムント・フロイト後継者の一人である。コフートが生涯にわたって続けたのは、自己心理学と自己愛についての研究だった。 多くの人にとって「自己愛」とはどのようなものだろう。否定すべき未熟なもの?それとも、大切で必要なもの?コフートの自己心理学や「自己愛」の研究は、私たちの日常にどれだけ役に立つのだろうか。本稿ではそれを考えてみたい。 図1 精神分析・深層心理学の系譜 ハインツ・コフートは、一九一三年にオーストリアで生まれた。ナチス・ドイツ時代にアメリカ合衆国に亡命し、その後米国で活躍した。 精神分析家として発達心理学の確立に貢献した。「精神分析的自己心理学」を確立し、大きな広がりをもった理論を展開した。「自己愛」を中心として、「自己」の発達に関する研究に生涯を捧げた(