日本のサラリーマン物のひとつの型の起源を源氏鶏太のサラリーマン物(『三等重役』など)に求めて、その遺伝の血(源氏の血)が、日本のサラリーマン漫画にどのように継承され、また変容していったかを、その時代背景をだぶらせながら、非常に読みやすい文体で書かれた通史である。 ここでいう源氏鶏太の遺伝子とは、本書の言葉を引用すると 「源氏鶏太の小説は、基本的に単純明快な勧善懲悪が貫かれる。誠実な善人である主人公は報われ、主人公と敵対する卑怯な悪役は必ず失脚する」 というものだ。 さらに源氏の血では、仕事の中身やその成果が、主人公の命運を決めるものではない。主人公の人生を左右するのは、登場人物たちの「人柄」である。 「人柄がよければ、上司と女の後ろ盾を得ることができて、ドンドン出世出来る。人柄が良ければ、派閥に入らなくても誰かがちゃんと評価してくれる。人柄が良ければ、バーやクラブでママに好かれ、貴重な企業