下條●お二人目のゲストをお招きしましょう。フッサールやメ ルロポンティから三宅一生まで、幅広く身体とモードを現象学 する臨床哲学者、鷲田清一さんです。鷲田先生には衣服やお化 粧と身体の関係についてお話を伺いたいと思います。さっそく ですが、まず先生のご専門である臨床哲学についてちょっと説 明していただけますか。 鷲田●分かりました。哲学という学問の基本は、「自分って何だ ろう」とか「言葉って何だろう」といった、誰もそれなしでは生 きていけないようなありふれた物事について考える学問なん ですね。でも日本では、哲学的思考というものがいまだに定着 してないように思うんですよ。西洋哲学の研究という点では決 して海外に引けを取りませんが、それは哲学学であって、哲学 をすることとは別のことですよね。 哲学のテキストを開くと、難しい漢字がずらりとならんでい ますが、例えばあそこに書かれている「存在」