サバが不漁に喘いでいる。「漁業情報サービスセンター」の統計によると、2023年のマサバ・ゴマサバ水揚量は21万トンと、19年の41万トンからほぼ半減した(図1)。昨年まで12年連続水揚げ日本一だった銚子漁港は、その座を釧路に明け渡した。イワシとともに水揚げの主力であるサバの水揚げが昨年の3万トンから1万7千トンへの半減したことがその要因だ。 青森県八戸市に本拠を有する水産加工業者も、今年早々青森地裁に自己破産を申請している。負債額は約2億1600万円。コロナ禍による受注減とともに八戸港でのサバの水揚げ不振が引き金になったという。各地の漁業者から「サバが獲れない」との声が聞こえる。 サバ資源への楽観的な評価 これまでわが国で実施されてきたサバに対する資源評価は楽観的なものだった。水産基本法第15条は「国は、水産資源の適切な保存及び管理に資するため、水産資源に関する調査及び研究その他必要な施策
「処理水問題の影響はほとんど見当たりませんでした。探すのが大変なぐらいでしたよ」 上海市在住の日本人駐在員Aさんのぼやきだ。普段からよく筆者の記事を読んでくれている熱心な読者なのだが、大きな話題となっている福島第一原発処理水の海洋放出から約10日間となる9月3日に日本人街に出かける用事があり、「写真を撮ってきましょうか」と連絡してくれた。 「抗議活動をしている人はいるか?」「日系スーパーの客入り」「日本食材を使っていませんとの貼り紙はあるか」「(日本人街に限らず)買い占めで売り場から塩が消えていないか」あたりに着目して見てきてほしいとお願いしてきた。 Aさんが向かったのは上海市西部の虹橋地区。日本人駐在員が多く、日系のレストランやショップが数多く集まる地域だ。すごい光景が展開されているのでは……と意気込んで向かったAさんだが、行ってみると冒頭の感想になったという次第だ。 「日系スーパーには
欧米では、政府機関を中心にした中国製アプリの使用禁止の動きが激しい。その代表とされるのがTikTokである。 中国にデータが流出しているとの疑念から米国では、昨年12月に連邦政府職員が公務で使用する携帯電話でのTikTokの使用を禁じる「TikTok連邦政府デバイス利用禁止法」が成立している。2月23日には欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)、2月27日にはカナダ政府、3月16日に英国政府、3月17日にはニュージーランド議会が公務で使用する機器でのTikTokの使用を禁止している。 背景にある中華人民共和国国家情報法 米国政府はさらに、TikTokを中国以外の国の企業へ売却するように求めているようだ。その背景にあるのは、中国が2017年から施行している「中華人民共和国国家情報法」にある。 この法律は、第7条で「いかなる組織および個人も法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活
2023年1月16日から26日にかけて、インドの戦闘機4機(インド初の女性戦闘機パイロットも含む)と大型輸送機2機、空中給油機1機が、茨城県にある百里基地にきて、航空自衛隊と共同演習「ヴィーア・ガーディアン」を行う。日印で行われる初めての戦闘機の共同演習である。実は、大変重要な演習である。 なぜそういえるのか。筆者は、日印戦闘機の共同演習について長らく、その重要性を繰り返し指摘してきた。筆者の知る範囲では、日本でその必要性を訴えて執筆し続けてきたのは筆者一人である。だから、今回、実現するにあたって、なぜこの演習がそれほど重要なのか、きちんと説明したい。大きく3つの理由がある。 対中国戦略としての有効性 最初に、この演習は、中国を念頭に置いた国家戦略上、とても重要である。スウェーデンのシンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、11~20年の間、中国の軍事支出は76%伸
ロシアの侵略戦争開始以降、日本経済は沈下の一途。円安や、ガソリン価格の動向は見通しが立たない。人件費が安い海外生産主流となっていた状況にも変わりはじめた。アイリスオーヤマは、5月に他メーカー同様、製品の値上げを発表したが、それだけでは吸収できない製品について、国内での生産開始を決めた。 空気を運ばせるな 最近は、家電メーカーとしても、徐々に名が通り始めたアイリスオーヤマ。彼らが扱っている製品は家電だけではない。同社の母体となっているホームセンターにある製品すべてを何らかの形で手掛けている。 ホームセンターで扱う代表的な製品に、収納ボックスがある。大きなプラスチックケースは、あまりにも嵩張るので、売り場面積の大きなホームセンター以外、ほとんど扱うところはない。逆に、ホームセンターといわれるところには、必ず置いてある。今の時代、この収納ボックスがないと、家の中が、整理ができないと言っても過言で
日本は、どのくらい貧しくなっているのか。このことは、おそらく日本国内で暮らしていると、諸外国との比較が難しい分、あまりピンとこないかもしれない。しかし、国民全体の家計は、年々、厳しくなっていることは間違いない事実ではないだろうか。 1990年代半ばから欧米で過ごしてきた筆者は、日本の経済力が次第に衰えていく様子を、国外の人々の暮らしぶりと照らし合わせながら観察してきた。ヨーロッパを旅する日本人観光客や駐在員らは、当時、町中の至るところに溢れ、ありとあらゆる商業施設や飲食店を賑わしていたものだ。 バブル崩壊前の90年時点では、日本の平均賃金は、英国やフランスよりも高かったのだから当然かもしれない。金遣いのいい日本人は、現地人にとってありがたい存在だった。しかし今では、その光景は、中国人と韓国人に入れ替わった感がある。 ヨーロッパの若者たちは、ソニーやパナソニックがどの国の製品か知らず、トヨタ
今年も例年通り8月20日に、サンマの棒受け網漁の大型船の出漁が始まりました。日本のサンマ漁の漁獲量の約99%が、大型船を主体とする棒受け網漁が占めています。しかし漁獲量は減り続けていて、昨年(2021年)は僅か2万トンを切り過去最低を更新しました。一方で、漁獲の減少に伴い、魚価は大幅にアップしています。残念ながら大衆魚のサンマが、漁獲量の減少で大衆魚ではなくなりつつあります。
安倍晋三元首相が選挙の応援演説の最中、凶弾に倒れ、暗殺されてしまった。かけがえのない指導者を失ったのは間違いないところである。日本だけでなく、世界各国でも大きく報じられ、各国の指導者も時間を割いて日本大使館などを訪問し、記帳している。ただ、その中でも、インドの対応は異例だ。 インドは、他の国に先駆けて、暗殺の翌日を、国全体が「喪に服する日」にした。印ナレンドラ・モディ首相はホームページに声明「わが友、安倍さん」を掲載、日本語版もだし、喪に服している。さらに、米豪と連携し3か国の指導者の共同声明も出した。 インドのテレビは安倍元首相の特集番組を一日中放送し、筆者も呼ばれた。公共放送のDDIndiaだけでなく、NDTV、Times Now, Mirror Now, CNN News18, Republic TV, NewsX, India Aheadなどのテレビで、安倍元首相の功績について、実
3月8日は国際女性デーだった。1908年に米ニューヨークで参政権のない女性労働者が労働条件の改善を要求してデモを行なったことを記念して、1975年、国連はこの日を国際女性デーと定めた。女性の「十全かつ平等な社会参加の環境」を整備するように呼びかける日になっている。 この日、日本経済新聞は日本の男女の賃金格差が大きく、それが経済成長を阻む要因になっていることを第一面で取り上げた。特集記事では持続可能な未来をつくるためには、女性リーダーの育成とジェンダー平等が必要であることを強く訴えた。 報道各社も、世界経済フォーラム(WEF)が発表するジェンダー・ギャップ指数をめぐって、日本の順位が格段に低く、対象となった156カ国の中120位と先進国の中で最も女性の地位が低いことを伝えた。 所得格差の拡大にもつながっている 日本のジェンダー不平等の大きさ、すなわち女性の地位の低さは、経済成長だけではなく、
日本文化の象徴、ニシキゴイ。見る人の目を楽しませようと、全国各地で放流が行われている。だがその安易な考えの放流は、生態系破壊や感染症蔓延など、不可逆の事態を招きかねない。 富士川水系の一つ、荒川。山梨県甲府市を南北に貫く一級河川だ。その支流、貢川(くがわ)の堤防から水面を眺めると、色鮮やかなニシキゴイが優雅に泳ぐ姿が目についた。遊歩道に設けられた掲示板には、ニシキゴイを川に放つ小学生の写真。こののどかな場所が、ゴールデンウィーク中に起こったインターネット上の「炎上」の舞台となった。 5月2日、NPO法人「未来の荒川をつくる会」が貢川に300匹のニシキゴイを放流した。地元の小学生53人がこのイベントに参加し、甲府市長や国会議員も立ち会った。山梨日日新聞など地元メディアも微笑ましいイベントとして好意的に報道した。同NPOが開催したニシキゴイの放流は今回で9回目だ。これまで通りであれば、ささやか
東京栄養サミット2021が12月7、8日、開催されています。栄養を巡るさまざまな課題について各国政府や国際機関、企業、市民団体などが取り組みを発表し、意見交換します。 世界は今、「飽食」と「飢餓」という両極端の栄養課題に同時に直面するといういわゆる「栄養の二重負荷」対応を迫られています。海外の食品企業は、製品を通じた栄養改善と健康への貢献を前面に打ち出し、食品企業の役割が激変しつつあります。 一方、日本では栄養に対する社会の関心が高いとは言えず、実際には諸外国とは異なる深刻な問題が進行中なのに、東京栄養サミットへの関心もさっぱり盛り上がりません。それに、「伝統的な和食、手作りに戻って健康に」「オーガニックで安全・安心」というようなニセ科学の俗説が大手を振ってまかり通っているのも懸念材料です。 食品企業の〝評価指標〟も欧米流が浸透? 陰ではさらに、困った課題が新たに生じています。肥満・飽食に
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