決して簡単な決断ではなかった。 2021年5月21日、DFタビナス・ジェファーソンのフィリピン代表選出が発表された。同時に、タビナスは日本代表になるという夢を断念することになった。 J2水戸ホーリーホックで若きDFリーダーとしてプレーする22歳は、フィリピン人の母とガーナ人の父を持つ。母親とはタガログ語で、父親とは英語で話す一方で、家の外に出れば常に日本語でコミュニケーションを取る。小さい頃からこの毎日がタビナスにとっては当たり前だった。 「小学校に入るまではみんな2つくらい言語を話せるものだと思っていたら、同じハーフの子でも日本語しか話せないことに衝撃でしたね」 小学生になると、徐々に自分が周りの人たちと違うことに気づく機会が増えた。肌の色が黒いことや、漢字が入っていない自分の名前に違和感はあったが、家族は円満で学校生活も楽しく過ごしており、それはあくまで“ちょっとした違和感”に過ぎなか