ファッションや洋服は、しばしば「鎧」などと形容され、着用者の身体や心を様々な“外部”から守ってくれる役割を持っている。一方で、装いは自身の好みや属性を目に見える形で纏うことで、その内面や役割、見せたい姿を表に出し、他者や社会と繋がることのできるツールにもなりうる。 「不器用で、社会との折り合いがなかなかつかず、生きづらさを感じている人」という人間像を掲げたクリエイションを行うブランド「ピリングス(pillings)」も、まさに物理的にも概念的にも着る人のままならなさを受け止め心身を守ってくれる、いじらしくも愛おしい“繭”のような服を提案し続けてきた。しかし、今回2025年春夏シーズンでは、そんなピリングスを象徴する“繭”が姿を消した。では、繭に代わって村上が新たに提示しようと試みたのはいったい何だったのか。 村上が今季のコレクションを通して表現することを目指したのは、「内向的な人が外に出て