いつまでも私の記憶の中に残っている美しいテレビCMがあります。 例えば1987年、猿がヘッドフォンで音楽を聴きながらウットリとしているソニーWALKMAN(ウォークマン)。1983年、何気ない街や自然の中にただクルマを置き、ルイ・アームストロングの名曲「この素晴らしき世界『What a Wonderful World』」とオーバーラップさせたホンダ・ワンダーシビック。壮大なボレロの音楽とともにクルマがゆっくりと登場するホンダ2代目プレリュードなど。とてもシンプルでありながら、見ている人の心に突き刺さるようなメッセージが込められていたCMでした。 「もの」と「人」の関係が現在よりもずっとシンプルであった時代の、人に感動を与えるテレビCM。そこにはCG(コンピューターグラフィックス)合成もなく、手でアイデアを創っていた時代です。時間も手間もかかっていた分、その効果はダイレクトにこころに伝わって
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 年末のある日のことです。マンションのエレベーターで乗り合わせた若い主婦が、行き先階のボタンをゲームのごとく早押しし続けていました。いらつく主婦。閉まらないドア。たかが2~3秒のことなのに待つことができない。エレベーターのボタンは、そのような早押しには対応せず、結果エレベーターは動いてくれません。 それはまったく美しくない光景でした。何を急いでいたのでしょうか。その指の動きを見ていると、もしかして特に急ぎの用があるわけではなく、彼女はいつもこうなのではないかと思いました。 なにごとも早く済ませないと収まらず、とにかく進まないと落ち着かない精神状況。現代病のひとつではないかと思われます。 夫は忙しい仕事、主婦は子育てや家事に追われる毎日。会社や社
2011年に入っても、内部告発サイト「ウィキリークス」による機密情報の暴露は一向に衰える気配を見せない。年明け直後の1月1日には、東京の米国大使館発とされる日本の調査捕鯨に関連する公電が公開され、大きな話題となった。 連日のように世界中で報道されているウィキリークス関連のニュースだが、伝えられる内容はもっぱら暴露された情報そのものやウィキリークス創設者であるジュリアン・アサンジ氏の言動や動向、政治的な話題が中心となっている。多くの人が注目しているのはまさにこれらの話題であるから、このこと自体は至極当然である。 しかし、それ以外の情報、例えば「ウィキリークスではどんな技術が使われているのか」や「ウィキリークスを潰したい人が山ほどいるのに、潰れないのはなぜか」、「告発者の匿名性をどうやって守っているのか」などについても知りたいと思っている人は少なからずいるはずだ。 残念ながら、そうした技術面に
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 前回、国境の壁を何とも思わないパワフルな下着メーカーであるPants to Poverty(パンツ・トゥ・ポバティー)を取り上げたところ、販売サイトのアクセスが急伸したという、喜びの報告をスタッフの方から頂戴しました。 お買い上げいただいた方もいらっしゃったようです。私も愛用しており、この肌触りの良さは病みつきになります。 さて、私は「未来の仕事」を考える要素として、「国境はハードルならず」「ワラジは2足以上履け」という2つの視点がヒントになると思っています。今回は、「ワラジは2足以上履け」について話を進めていきます。 Cho君。この名を覚えていていますか? こちらも前回、取り上げました。私の経営するソウ・エクスペリエンスのスタッフがお世話に
「最近、興味ある企業はどこですか?」。いつもとは逆に、私から本連載担当編集者さんに聞いてみた。 「固有の企業というより、個人の企画力を生かしながら組織がダイナミックに事業を立ち上げる『プロジェクト型組織』に大変、興味があります。今の時代、ヒットを生む企画力がとても重要になっている。だけど、田嶋さんもよく言われるように、日本は、特に大企業ほど組織力で成長してきました。社員には組織人の能力を要求してきたので、『ヒットする企画を出せ』と言われても、すぐに出てくる土壌がない。個人企画力の育成は、近年、企業の共通テーマとなっていると思います。個人企画力のある、プロジェクト型組織のマネジメント事例を、ぜひ、知りたいですね」(担当さん)。 あるある。そんな会社。創業時から「世界一の企画会社」を標榜しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)だ。よーし! せっかくだから、社長兼CEO(最高経営責任
先日訪問したある会社のベテラン技術者が嘆いていた。 「私たちの職場の構成員を見ると、正社員は3分の1以下。大部分が派遣社員とパート・アルバイトと外国人労働者の混成部隊。その人たちに技術を教えるのだが、彼らが将来ライバル企業で働くかもしれないと思うと、もうひとつ熱が入らない。 また、彼らも“次の職場では、こんな技術、役に立たないかもしれない”と思っているためか、積極的に覚えようとしない。このままでは我が社の技術は遠からずなくなってしまいますね」と嘆いておられた。 確かにここ10年ほどの間に雇用の流動化が異常なほど進展した。ありとあらゆる職場で、パートや派遣社員の数が大幅に増えた。しかし当然のことながら、彼ら、彼女らはいつ「他の会社に変われ」と言われるかもしれないから、正社員に比べると愛社精神は薄いだろう。そのような人々が大勢を占めるような職場で、日本が得意にしてきた「すり合わせ型の技術」を維
清野 由美 ジャーナリスト 1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。 この著者の記事を見る
今年のアニメーションDVDマーケットで最大のセールスを期待される作品が7月4日に発売される――それがスタジオジブリの宮崎吾朗監督作品「ゲド戦記」。このDVDの発売に当たって、従来にないマーケティング・宣伝手法が採用された。 「ゲド戦記」に描かれる世界の魅力を伝えるために、文庫本“ゲドを読む。”を110万部制作し、何と無料配布するというのだ。しかも、この本の内容は吾朗氏の映画ではなく、原作小説を解説したもの。今回は、この前代未聞のプロモーションの狙いを探ってみた。 アニメーション映画「ゲド戦記」は、スタジオジブリの看板クリエーターである宮崎駿監督の長男・吾朗氏が初監督した作品だ。劇場公開は2006年7月。興行収入は同年の邦画トップとなる76億5000万円を稼ぎ出した。 「ゲド戦記」の映画化については、かつて若かりし頃の宮崎駿監督が原作者であるアーシュラ・K.ル=グウィンに打診。しかし、その時
丹地宏太郎(たんち・こうたろう) Koutaro Tanchi 1975年岡山県生まれ。2001年に「H.P.FRANCE」に入社し、現在、東京・神宮前の「DECO TOKYO」店長を務める。 東京・青山にある、中古家具・輸入雑貨販売店の「H.P.DECO」が、2004年10月にこれまでにない新たなイベントを試みた。取り扱う商品を“物語”をベースにして展示したのだ。 「H.P.DECO」が従来行っていたイベントは、ある一定人数の顧客にDMを送り、来店した人たちに対してドリンクやフードサービスを提供し、新たに入荷した商品を紹介するやり方だった。 「これまではお得意様が中心のイベントだったのですが、もっと幅広くいろいろな方にこのお店を知ってもらいたかったんです。お店の主役である商品を見てもらいたかった。だから、お客様が“とどまる”イベントではなくて、“流れる”イベントにしようと思ったんです」と
日経ビジネスオンライン連載中に賛否両論を巻き起こし、「日経らしからぬ(一応申し上げますと、弊社は日本経済新聞社とは別の会社です)」と、お褒めとお叱りを頂いた「U35男子マーケティング図鑑」が、大幅な加筆と再構成を加え、よりパワーアップして書籍になって帰ってきました。その名も『平成男子図鑑 ~リスペクト男子としらふ男子 』。 本書の出版を記念して、著者の深澤真紀氏がぜひ会ってみたいと企画したのは、若者を扱った話題の新書『若者はなぜ3年で辞めるのか? ~年功序列が奪う日本の未来』『搾取される若者たち ~バイク便ライダーは見た!』の筆者、城繁幸氏、阿部真大氏との鼎談だった! どうやら、書籍には書ききれなかった、U35(アンダー35)の男子世代への思いを、彼らとぶつけ合いたいらしい。お2人から快諾を頂き、話が始まるやいなや、バブル世代への怒りでいきなり噛み合った3人の大暴走が始まった。異論・反論、
企画書といえば、相手を飽きさせない奇抜なコンセプトを打ち出したり、斬新な提案を盛り込んだりしないといけないと思っている人は多いはずだ。 奇をてらう必要はない しかし、その強迫観念は捨ててしまおう。1ページ、2ページの資料は、大ヒットしているサントリー「黒烏龍茶」と転職サイトで圧倒的なシェアを誇るリクルート「リクナビNEXT」のナマ企画書である。これを見る限り、成果に結びつく企画書は、合理的な提案やそれを裏づける事実などを常識的な文章で伝えている。 まず「黒烏龍茶」。我々のような素人にもとても分かりやすい企画書であることは一目瞭然だ。 「企画書を見せる相手は、社内の営業パーソンと小売店に勤務する方々が中心。いつも忙しくしているので、タイトルとビジュアルを見れば内容が分かるように工夫した(極意 1)。表現も簡潔に。データも変化が起きていることだけが伝わればいい(極意 2)と思って最小限に抑えた
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン ファイル交換ソフト「Winny(以下ウィニー)」がウィルスに感染、至るところでPCのハードディスク内の情報をネットにばらまき始めたニュースは印象深かった。 世間は留まるところを知らぬ個人情報の流出に怯えていた。組織は、内部秘で扱われるべきデータがあっけなく外部に漏れてしまう情報セキュリティの甘さを「対岸の火事」と嗤えず、管理体制の強化を焦っていた。 しかし私自身の印象は、怯えや焦りとは相当に隔たっていた。そうか、ウィニーはもはやジャーナリズムになったのだな――。そんなことを私は考えていたのだった。 ジャーナリズムは「プロ」のもの? こう書くと何を言い出すのか、気でも狂ったかと非難されそうだ。確かにジャーナリズムとは新聞社や放送局のような「プロ
若い女性向けにファション性の高いノンレザーシューズの企画と販売を手がけるアマガサ。同社の主力ブランド「JELLY BEANS(ジェリービーンズ)」は女性ファッション誌などで頻繁に紹介され、流行に敏感な女性たちの注目の的になっている。このブランド力を背景に、業績は右肩上がりの好調を維持。2007年2月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場した。 靴の素材というと、「革」が一番というイメージがあるかもしれない。確かに革は丈夫で、吸湿性があって、足に馴染みやすい特徴を持つ。しかし最近の若い女性たちはこれまでの常識には全くとらわれず、何よりもファッション性を重視して靴を選んでいるのだ。 そんな女性の気持ちをとらえた靴作りを追求しているのがアマガサである。同社は、合成皮革や人工皮革といった「ノンレザー」の素材を活用して、ファッション婦人靴の市場を切り開いている。 ノンレザーの利点を婦人靴に生かす ノン
えー、「超インタビュー」の第4弾の始まりです。今回は糸井さんの本業である「広告」のお話です。ネットマーケティング時代の広告手法、糸井さん自身が「先読み貧乏」になった話、そして、ほぼ日のビジネスモデルへと展開してまいります。今回の話には先読み貧乏やら、草鞋職人といった、これまでのインタビューで登場したキーワードが出てきます。1回目からご覧頂くと一層、ご理解が深まるかと存じます。では。 NBOnline(=NBO) 今回、糸井さんに伺いたかったことの1つに「広告」の話題があります。インターネットが広まった頃、「ネットの普及で広告ビジネスが縮小する」というストーリーがありました。大企業だけではなく、陶芸家さん、草鞋の職人さん(イトイさんに聞く「Web2.0」(その2)の記事へ)までお客さんがネットで直接対話できるようになってきた。となると、マスに向かって発信する意味が薄れるので、広告ビジネスは縮
10年ぐらい前にエコノミスト誌がその年の年末版に未来を予測する記事を載せました。いろんな予測の中で、特に私の目を引いたのは日本についてのものでした。すなわち日本はアジアにおけるスイスになるであろうという予測だったのです。 つい最近この予測を思い出すきっかけとなったのは、英字新聞で読んだシンガポールについての記事です。その見出しは「シンガポール:アジアにおけるスイスを狙っている」でした。 シンガポールは中国の猛烈な競争に対してあの手この手で政策を構築してきています。注目の1つはアジア系の金持ちをシンガポールへ誘致するという国策です。そもそもシンガポールは治安がよく、アジアの中でも生活水準が高く住みやすい国です。しかも中国系、インド系、マレー系などからなる多民族の国でもあります。 それらの有利な条件を武器にして政府が具体的な誘致策を設けています。例えば所得税の上限は20%、キャピタルゲインおよ
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 現在、世界の携帯電話利用者数は24億人を超えている。国別に見た場合、利用者数上位の顔ぶれは次の通りである。1位/中国(約4億6000万人)、2位/米国(約2億3000万人)、3位/ロシア(約1億5000万人)、4位/インド(約1億4000万人)、5位/ブラジル(約1億人)、6位/日本(約9600万人)。以上のようにBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と米国、日本が上位を占める構図となっている。この6カ国だけで約12億人の携帯電話利用者がおり、世界の全利用者の半数を占めることとなる。 日本は、世界で初めて「写メール」サービスを開始、世界で初めて第3世代携帯電話サービスを開始、世界で初めて「おサイフケータイ(非接触IC搭載端末)」を開始す
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