校閲記者といっても読めない漢字はある。少なくとも私はある。読めなければ辞書を引けばよい。そもそも、これだけインターネットが便利になって、たいがいのことは検索すれば分かる時代になって、教養とは、どれだけ知っているか、ではなく、どこで何を得られるか――つまり、情報への正しいアクセスの仕方を知っていることだと、普段はうそぶいていた。 たとえば「鳰の湖」。先場所は東9枚目の十両力士だが、これが読めない。それでも人前で読み上げる機会も幸いにしてないし、間違った漢字(「鳩の海」など)さえ入っていなければよいということで、「はいるとりのみずうみ」と心の中で勝手に読み下していた。ちなみに、私は「大飯原発」も、「大井」や「大居」にならないよう、「ビッグライスげんぱつ」とこれも自己流に読んでいる。 だが、あるとき、たまたま隣にいた先輩校閲記者に、なかば試すような、少し意地悪な気持ちで、「鳰の湖」の読み方を尋ね