2022年を迎えた。新春だからこそ日々のせわしいニュースを離れ、衰微するニッポンの今と未来を俯瞰(ふかん)してみたい。神戸女学院大名誉教授で思想家の内田樹さんを訪ねると、こんな答えが返ってきた。「『選択と集中』をやめなさい」。どういうことか?【吉井理記/デジタル報道センター】 ――「選択と集中」は、限られた人やカネの使い方を吟味し、より有用だと思われる事業や部門に多く振り向けたほうが効果的だ、という考えです。毎日新聞には1993年5月の大手繊維メーカー社長のインタビューで初めて登場します。以来約30年間、1400本超の記事で語られてきました。これを「捨てる」とはどういうことでしょうか。 ◆「パイ」が大きくなっている時には、「選択と集中」というようなことは誰も言いませんでした。90年代初めまでは、大学でも研究費は潤沢でした。僕のような文学研究者の研究費なんか自然科学系に比べるとごくわずかです