国際法学会エキスパート・コメントNo.2021-2 田中 佐代子(法政大学法学部准教授) 脱稿日:2021年1月18日 1.はじめに 北朝鮮は弾道ミサイルの開発を推進し、ミサイル発射実験を繰り返し行っています。そうした状況をうけて、日本は弾道ミサイル防衛システムの整備を進めてきました。そこでは、ミサイルが発射された後に、発射国の領域外に出た後の段階で迎撃することを想定しています[i]。しかし、北朝鮮の弾道ミサイル技術・攻撃能力が向上していることなどから、日本の安全にとっての脅威が増しているという認識の下で、改めて注目されているのが、いわゆる敵基地攻撃能力の保有をめぐる議論です。ここでいう敵基地攻撃能力は、一般的に、敵の基地などのミサイル発射拠点・発射装置を攻撃する能力として理解されています。飛翔しているミサイルを迎撃するのではなく、敵基地に打撃を与えてミサイル発射を阻止することを狙いとした