「感銘を受けた作家は?」という質問に、吉田健一、大岡昇平、石川淳の3人を挙げた丸谷才一さん(東京・目黒区で)=三輪洋子撮影 丸谷才一さん(83)が、作家生活50年を迎える。小説、翻訳、評論、書評――と幅広い分野で健筆をふるってきた作家に、今の心境を聞いた。(金巻有美) デビュー作は、1960年の『エホバの顔を避けて』。以来、『たった一人の反乱』『女ざかり』『輝く日の宮』などほぼ10年おきに長編を発表、知的なたくらみと巧みなレトリックに満ちた作品はいずれも話題作となった。昨年末には、短編3編を収録した『樹影譚』の特装版を中央公論新社から刊行。「50年はあっという間。別に大した感慨はないけどね。あっはっは」と豪快な笑い声も健在だ。 この半世紀、「近代日本文学の狭苦しさ、窮屈さ、偏向といったものにさんざんけんかを売って暮らしてきた」と語るように、明治以降の私小説を主流とした近代日本文学と真っ向か
(毎日新聞社・2100円) ◇読書をテーマにした「本好きの大人の絵本」 ある日、本という物体の存在を知らない宇宙人が飛来して、本屋に入り、出たばかりのこの一冊を持ち帰った。地球をのぞく全宇宙の学者が集り、カンカンガクガクさまざま論議した後、出た結論は、次の二つ。 (1)、本は下を向いて読むらしい。 なぜなら、描かれている人も動物も彫像もみな下を向いていたからだ。 確かに今私が確かめても、本来なら正面を向くはずの福助は客をニッコリ迎えるのも忘れて下を向いているし、樹の下でニュートンはリンゴが落ちるのに気づかず下を向いている。あろうことか自由の女神まで、本を開いて左手で支え、ページに向かってうつむいているではないか。それも右手のトーチを照明代りに近づけて。本が燃えるぞ。 (2)、本は左を向いて読むらしい。 西郷さんの連れている右向き犬とイノシシにまたがる右向きの仁田四郎忠常などをのぞくと、一匹
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