読書ノート(ほとんど引用からなっています)◆中井久夫の「災害がほんとうに襲った時」(阪神大震災に際しての記録)より抜粋。 【初期の修羅場(1995年1月17日夜――1月18日)】 有効なことをなしえたものは、すべて、自分でその時点で最良と思う行動を自己の責任において行ったものであった。初期ばかりではない。このキャンペーンにおいて時々刻々、最優先事項は変わった。一つの問題を解決すれば、次の問題が見えてきた。 「状況がすべてである」というドゴールの言葉どおりであった。彼らは旧陸軍の言葉でいう「独断専行」を行った。おそらく、「何ができるかを考えてそれをなせ」は災害時の一般法則である。このことによってその先が見えてくる。たとえ錯誤であっても取り返しのつく錯誤ならばよい。後から咎められる恐れを抱かせるのは、士気の萎縮を招く効果しかない。現実と相渉ることはすべて錯誤の連続である。治療がまさにそうではな