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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (20)

  • 「運命の男」とハードボイルドヒロインの誕生~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を見た。言わずと知れたルイーザ・メイ・オルコットの有名作の映画化なのだが、まあセンスのない日語タイトルがついている。グレタ・ガーウィグ監督作である。 www.youtube.com お話は『若草物語』に忠実でありつつ、かなり変えている…というか、みんなが疑問に思いがちなジョー(サーシャ・ローナン)の結婚について、メタフィクション的なものすごくひねったオープンなエンディングを用意している。さらに時系列を乱した編集になっており、最初はなんか「え、もうローリーふられた後なの!?」みたいなところから始まってちょっと面らったのだが、だんだん少女時代と現在の似たような体験が併置され、それがジョーの頭の中で物語になっていくプロセスを示すためにこういう構造になっていることがわかってくる。これは脚色としては大変凝ったうまいやり方で、古典の再構成としてはお

    「運命の男」とハードボイルドヒロインの誕生~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    hanemimi
    hanemimi 2020/06/28
  • 子供の世界と性愛の拒絶~『AKIRA』4Kリマスター版(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    大友克洋監督『AKIRA』の4Kリマスター版をIMAXで見てきた。今回初めてこの映画を見た。漫画のほうは全く読んだことがない。 www.youtube.com 舞台は第三次世界大戦から31年後、2019年のネオ東京である。オリンピックを控えているのにしょっちゅう抗議運動が起こっているという不穏な政情ではあるが、一応戦争による破壊からは街は再生している。そんな中、暴走族をしている少年である鉄雄がひょんなことから超能力を持つタカシと接触し、自らも超能力に目覚めてしまう。鉄男を助けようとする金田はいろいろあって反政府活動をしている若い女性ケイと組むことになる。 けっこう複雑な話なのだが、テーマとビジュアルがぴったりあうよう大変よく考えられている。この作品の大きなテーマのひとつとして子供の自我の肥大というのがある。超能力に目覚めた鉄男が暴れ始める原因が小さい頃から自分を助けてくれていた金田への漠然

    子供の世界と性愛の拒絶~『AKIRA』4Kリマスター版(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    hanemimi
    hanemimi 2020/06/13
  • 「絆」ってこれだよね~『パラサイト 半地下の家族』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』を見てきた。 www.youtube.com 公開中なのであまりネタバレしないように設定だけ書くと、狭くてボロい半地下のアパートに住んでいる全員失業中の4人家族キム一家が、長男のギウ(チェ・ウシク)が高台のおしゃれな家に住むパク一家のもとで家庭教師を始めたのをきっかけに、パク家に全員が就職できないか画策し始めるという作品である。階級問題が主題のスリラーで、まあ一言で言うとリアル版『ハイ・ライズ』みたいな話である。 人物や展開はわりとデフォルメが激しく、とくに金持ちのパク一家は記号みたいに描かれている。家庭教師としてやってきたギウに恋をするパク家の娘のダヘ(チョン・ジソ)とかのヨンギョ(チョ・ヨジョン)は相当にステレオタイプな描き方になっている。一方、半地下のアパートと金持ちの家の対比などはものすごくしっかり細部まで丁寧に描かれており、このせいで

    「絆」ってこれだよね~『パラサイト 半地下の家族』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    hanemimi
    hanemimi 2020/01/23
  • 受動的な創られたヴィラン~『ジョーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ジョーカー』を見てきた。『バットマン』の悪役であるジョーカーがどうやってジョーカーになったのかを描いた作品…というのは建前で、ほとんど別の映画である。 wwws.warnerbros.co.jp ゴッサムシティに住むアーサー(ホアキン・フェニックス)はピエロの仕事をしながら母ペニー(フランセス・コンロイ)の介護をしている。アーサーは突然笑い出してしまうおそらくトゥレット症と思われる症状を抱え、精神的にも不安定でカウンセリングと投薬を受けているが、それでも憧れの仕事であるスタンダップコメディアンを目指して頑張っていた。しかしながらゴッサムシティが荒廃するとともにアーサーの人生はどんどん下り坂になる。ピエロの仕事の最中に悪ガキどもに襲われ、仕事はクビになるし、市当局が福祉を打ち切ったせいでカウンセリングも投薬も受けられなくなる。度重なる不幸のため限界になったアーサーをどんどん狂気が蝕んでいく

    受動的な創られたヴィラン~『ジョーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
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    hanemimi 2019/10/10
  • 冷蔵庫に入れるのはソーのビールだけでいいんだよ~『アベンジャーズ/エンドゲーム』(大量ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見てきた。 www.youtube.com 不必要にネタバレしないほうがいいのであらすじは省略する(この後盛大にネタバレするけど)。2008年からやっていて22あるシリーズの完結編的位置づけということで、大河ドラマの終わりみたいな作品である。これだけ広がった話をちゃんとまとめて過去作への目配りもあり、笑うところも泣くところもあって、全体としては文句はない。キャップとトニーが再会するところとか、ピーター・パーカーがトニーのところに戻ってくるくだりはかなり感動した。なお、ベクデル・テストはガモーラとネビュラの会話でかろうじてパスすると思う。 しかしながら、私がとにかく悲しく思っているのはナターシャのことである。ナターシャが冷蔵庫に入れられたからだ。 「冷蔵庫の女」という概念がある。これはアメコミの分析から始まって今では映画などでも使われるようになっている批評

    冷蔵庫に入れるのはソーのビールだけでいいんだよ~『アベンジャーズ/エンドゲーム』(大量ネタバレ注意) - Commentarius Saevus
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    hanemimi 2019/05/01
  • 『アフター6ジャンクション』の「英語圏のボーイズ・ラブ、【スラッシュ・カルチャー】入門」補足(文献情報など) - Commentarius Saevus

    昨日の『アフター6ジャンクション』で「英語圏のボーイズ・ラブ、【スラッシュ・カルチャー】入門」を聞いて下さった皆様、ありがとうございました。昔から聞いていた宇多丸さんの番組に出られるなんて、当に光栄でした(しかも『アフター6ジャンクション』に出るよと告知しただけで学生からいまだかつてない尊敬を受けることができてビックリしました)。ちょっと緊張してアカデミック度が減少しただのファンガールになってしまった上、早口(いつもは授業であの調子で90分しゃべってます)だわ父が暴走するわでしたが、宇多丸さん、日比さん、古川さんに助けていただいて楽しく話すことができました。トークはここから聞けます。 それで、いつもはスライドを作って話すので固有名詞などは文字で示すのですが、ラジオだとそれができないのにいつもの調子でやってしまったので、文献などの補足情報をいくつか文字で出そうと思います。詳しくは下のwez

    『アフター6ジャンクション』の「英語圏のボーイズ・ラブ、【スラッシュ・カルチャー】入門」補足(文献情報など) - Commentarius Saevus
    hanemimi
    hanemimi 2019/04/13
  • 女王を称えてるだけ~『ボヘミアン・ラプソディ』における、クイーンの外に広がる闇 - Commentarius Saevus

    『ボヘミアン・ラプソディ』を見てきた。言わずと知れたクイーンの伝記映画である。 www.youtube.com 主人公であるザンジバル生まれのパールスィー家庭の息子フレディ(ラミ・マレック)がギターのブライアン(グウィリム・リー)とドラムのロジャー(ベン・ハーディ)のバンドに入り、ベースのジョン(ジョゼフ・マゼロ)も加入して大成功するが、やがてフレディは自分がゲイ(あるいはバイセクシュアル)だということを自覚しはじめ、恋人のメアリー(ルーシー・ボイントン)とも以前ほどうまくいかなくなってきたり、バンドとも亀裂が生じていろいろなトラブルを経験し、やがてエイズになったことがわかるが、ライヴエイドで奇跡の復活を…という話である。 とりあえず私のクイーンに対する思い入れが相当偏っているからかもしれないと思うのだが(初めて自分のお金で買ったシングル盤はフレディ追悼盤「ボヘミアン・ラプソディ」だった)

    女王を称えてるだけ~『ボヘミアン・ラプソディ』における、クイーンの外に広がる闇 - Commentarius Saevus
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    hanemimi 2018/11/17
  • 連帯する女たちと中年男の危機〜『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を見てきた。1973年に行われた、元男子テニスチャンピオンである55歳のボビー・リッグズ(スティーヴ・カレル)と、29歳で女子テニスのトッププレイヤーだったビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)の「男女の戦い」(Battle of the Sexes)を描くものである。ここでビリー・ジーンが勝利したことは、女子テニスの発展にも女性解放運動にも大きな影響があったそうだ。 この映画が大変面白いのは、真の「悪役」がボビー・リッグズではないということだ。女子テニスの賞金が低すぎるため独自に女子テニスの協会を立ち上げ、女性アスリートのために尽力する健気なビリーに対して、性差別的な大口を叩き続け、メディアの前で挑発を繰り返すボビーはとても好人物とは言えない。しかしながらこの映画では、ボビーは既に試合をする前から人生においてはビリーに大負けしている。 ビリーはテニス界に

    連帯する女たちと中年男の危機〜『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
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    hanemimi 2018/08/02
  • 女の世界に行きたい王子〜ケネス・ブラナー演出、トム・ヒドルストン主演『ハムレット』 - Commentarius Saevus

    ケネス・ブラナー演出、トム・ヒドルストン主演でRADAで行われた『ハムレット』、非常に運良くチケットが当選したので行ってきた。 RADAのジャーウッド・ヴァンブラ劇場は小さなブラックボックスシアターで、大がかりな舞台装置などはほとんど設置できない。三方を囲むようにパイプ椅子の座席(上の階にはもうちょっとちゃんとした椅子があるが、それでも簡易)が置かれ、奥には一応簡単な背景を置けるようなセッティングだった。役者はほとんどを三方から観客に囲まれた状態で演技することになり、さらに私は一階席だったので役者との距離が大変近い。手を伸ばせば届きそうなところにトム・ヒドルストンがいる。衣装は現代のもので、セットについては前半部分は執務室の壁と机などが使われ、後半はもうちょっと抽象的な感じになる。 ケネス・ブラナーとトム・ヒドルストンが組んだということで、キャスティングがかなり工夫に富んだものになっている

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  • 詩の心をとてもあたたかく、明るく表現した作品〜『パターソン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ジム・ジャームッシュの新作『パターソン』を見てきた。 主人公パターソン(アダム・ドライヴァー)の一週間を描く映画である。パターソンはニュージャージー州パターソンでバスの運転手をしており、アーティスティックだがちょっと思いつきに流されやすいところもあるローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)と犬のマーヴィンと小さな家で暮らしている。朝早くから働き、毎晩犬の散歩をし、行きつけのバーで一杯やる暮らしの中で、ノートを持ち歩いて毎日詩を書いている。平穏な一週間が過ぎるかと思ったら、金曜日から週末にかけて事件が起こり… 非常によくできた映画で、最近見た映画の中ではピカイチに良かった…のだが、何が面白かったのかなかなか説明しづらい。まずは日常生活をちょっとした笑いをこめて丁寧に描くディテールが面白く、バーでの会話とか、犬の仕草とか、バスの中のちょっとした乗客の与太話とかがよく描けているというのもある。さらに主

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  • 二級市民には意見を伝える手段すらない〜『サフラジェット』(『未来を花束にして』) - Commentarius Saevus

    『サフラジェット』(『未来を花束にして』というタイトルだが、全く酷い日語タイトルである)を見てきた。1912年のロンドンを舞台に、洗濯工場でクズ上司のセクシャルハラスメントに苦しみながら働くモード(キャリー・マリガン)が女性参政権運動に参加するようになり、サフラジェットの闘士として戦う様子を描いた作品である。 全体としては、これまでミドルクラス以上の活動家が注目されがちだった女性参政権運動について、ワーキングクラスの女性たちに焦点をあてる近年の研究成果を反映した作品になっている(これについてはCarol Dyhouse, Girl Trouble: Panic and Progress in the History of Young Womenのレビューでちょっと触れたことがある)。サフラジェットというのはこの映画にも出てきたWSPUのメンバーを中心とする戦闘的な女性参政権活動家のことで

    二級市民には意見を伝える手段すらない〜『サフラジェット』(『未来を花束にして』) - Commentarius Saevus
  • これは女性の不条理な人生についての映画である〜『10クローバーフィールド・レーン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『10クローバーフィールド・レーン』を見た。実は『クローバーフィールド』は見ていない…のだが、『10クローバーフィールド・レーン』は女性の映画として物凄く面白かった。はっきりフェミニストSFといってもいいような作品だったと思う。 主人公は男と別れて家を出てきた途中、交通事故にあったミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)。目を覚ますとミシェルはシェルターに監禁されていた。シェルターの主であるハワード(ジョン・グッドマン)によると、このあたりが攻撃を受けて大気が汚染され、シェルターからは出られないという。一緒にシェルターに避難していたエメット(ジョン・ギャラガー・ジュニア)も同じことを言う。ハワードの言うことは当か、そして外ではいったい何が起こっているのか… この作品、設定にいくつか強引なところはあると思うのだが、緊張感のある展開なので見ている間はとくに気にならない。そして一番大事

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    hanemimi
    hanemimi 2016/07/01
  • フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための映画5本(1)歴史映画編 - Commentarius Saevus

    さてさて、6月に実施した「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための5冊(1)物語・ノンフィクション編」、「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための5冊(2)理論・学術・専門書編」、「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための5冊(3)フェミニスト批評編」だが、手すさびのつもりで作ったのに思ったり大きな反響を頂いてしまい、「映画」(とくに歴史もの)、「ガチの文学作品のみ」、「女性史」、「まだ翻訳が出ていないフェミニズム選書」、「シェイクスピア関連のフェミニズムもの」などについても選書企画やってもらえないかというリクエストを受けていたのだが、その後いろいろ仕事が増えたりしてなかなか手を付けられなかった。しかしせっかくリクエストを受けたものをほっておくのは教育上よろしくないので、ほそぼそとやろうと思う。 そこで、イギリスで女性参政権がテー

    フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための映画5本(1)歴史映画編 - Commentarius Saevus
  • 悪趣味を正しく狙って正しく撃ち落とす、が…『キングスマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    マシュー・ヴォーン監督、『キングスマン』を見た。 舞台はイギリス。エージェント組織、「キングズマン」のメンバーが亡くなり、新しいメンバーをリクルートすることになった。ふだんはサヴィル・ロウの仕立屋のフリをしているコードネーム「ガラハッド」ことハリー(コリン・ファース)は、ちょっとしたトラブルをきっかけに亡くなったかつての戦友の息子ですっかりグレているエグジー(タロン・エガートン)をスカウトし、教育しようとするが… 上に書いたあらすじのさわりからわかるように、この映画はスパイ版『ピグマリオン』みたいな話で、作中に『マイ・フェア・レディ』へのオマージュ的言及もある。ヒギンズ教授に相当するのがハリーで、エグジーがイライザなのだが、エグジーはイライザみたいな上昇志向のあるワーキングクラスというわけではなく、公営住宅に住んでいて義父に虐待されているアンダークラス(UKでよく話題になっている、福祉に頼

    悪趣味を正しく狙って正しく撃ち落とす、が…『キングスマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • ケアと癒やしの壮絶ノンストップアクション〜『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を見た。なお、オリジナルのシリーズは一切未見である。 物語は文明が破壊された砂漠が舞台である。ヒロインのフュリオサ(シャーリーズ・セロン)は独裁者でカルトの指導者であるイモータン・ジョーに軍人として仕えてそこそこ出世していたが、これまでの贖罪のため、イモータン・ジョーのもとで性奴隷として子どもを生まされている5人の女性たちを助けて逃走することにする。それをこれまたイモータン・ジョーの手先につかまっていたマックス(トム・ハーディ)が成り行きのせいで助けることになる。一行は追っ手を振り切ってフュリオサの一族であった女たちが住むところまで逃げ、新天地を目指そうと考える…ものの、マックスの説得でこれ以上放浪するよりはイモータン・ジョーを倒して砦に安全に生きられる環境を作ることを目指すほうが良い賭けだと考え、最後の戦いにのぞむ。主人公が行って帰ってくるだけという

    ケアと癒やしの壮絶ノンストップアクション〜『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(3)フェミニスト批評編 - Commentarius Saevus

    一昨日の「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための5冊(1)物語・ノンフィクション編」と「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための5冊(2)理論・学術・専門書編」に続いて、最後に「フェミニスト批評編」をやろうと思う。フェミニズムの文学批評は(というかよくできた批評の研究書というのはたいていそうだが)、普通に読んでいるとわからないような話の深い層を解き明かしてくれるものなので、別にフェミニズムにそんなに興味がない人であっても、を読んだり演劇を見る時によりおもしろく考える助けになるのでとてもオススメだ。ただ、今回は文学・演劇以外の批評、つまり映画、美術、テレビなどを対象にしたものや、クィア批評に該当するものは便宜的に入れないことにした(こういうものはたぶんそれだけで5冊別に選んだほうがいい)。あと、日語訳がないものとアンソロジーは除外したので、ブラッ

    フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(3)フェミニスト批評編 - Commentarius Saevus
  • フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(2)理論・学術・専門書編 - Commentarius Saevus

    昨日の「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための5冊(1)物語・ノンフィクション編」に続いて、今日は「理論・学術・専門書編」をやろうと思う。一応「理論・学術・専門書編」とは銘打っているのだが、所謂「フェミニズムの」の中から、私が初学者におすすめできそうだと思うものを紹介したい。 とりあえずとにかくわかりやすさ重視にしたので、古典と言われるものでも初学者が読み通しにくそうなものは入れなかった(このせいで哲学系が入らなくなったのはとても残念だ…)。また、冊数の都合上、「クィア理論」に入りそうなものは選ばないようにした(クィア理論ならそれだけで五冊選んだほうがたぶん良いと思う)。あと、フェミニスト的な文芸研究、つまり「フェミニスト批評」に入るものは明日、別に5冊選ぶことにしようと思うので、それは入れない。 ・エリザベート・バダンテール『母性という神話』鈴木晶訳、筑摩書房、1

    フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(2)理論・学術・専門書編 - Commentarius Saevus
  • フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編 - Commentarius Saevus

    最近炎上していたこのまとめがとにかくひどい。 「クソフェミ「まずはを読め!」俺ら「どのを?」のテンプレに答える当にフェミニズムが学べる5冊の」 とりあえずこのまとめのひどさはいくつもあるのだが、 ・タイトルに「クソフェミ」というのが入っている時点で、フェミニズムを侮蔑する気が全身から汗のようににじみ出ている。真面目に謙虚さと疑いを持って学ぶ気はないようだ。 ・そもそもフェミニストが「まずはを読め」というのをテンプレ的に言ってくるという状況があまり想像できないが、それはともかくとして他の専門分野で妙なことを言うと「を読んでから言え」と言われるのは当たり前なのに(宇宙、地震や火山、医学、歴史など)なぜフェミニズムだけこんなにウザがられているのか理解できないし、また関心があるという人にをすすめるのは別に普通である。 ・フェミニズムについて知りたいくせにいきなりロールズやセンをすすめ

    フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編 - Commentarius Saevus
    hanemimi
    hanemimi 2015/06/21
    [][ジェンダー]
  • 英文学者が個人的にオススメする歴史映画10作 - Commentarius Saevus

    フェイスブックのほうで「歴史家オススメの歴史マンガ、歴史映画」を募る企画が行われており、私は歴史家ではないのでいかがなものか…と思ったのだが、一応「昔のことをやっている人」ではあるので、ちょっと気軽にオススメ歴史映画をすすめるエントリを書こうと思う。一応、私は初期近代英文学の研究者なので、日史は無理だが… とりあえず基準としては、 (1)時代考証がしっかりしていること (2)歴史記述を論じる上で面白い映画であること (3)学生に見せても差し支えなさそうで、授業で使用できること (4)題材は英語圏の歴史に限定(これは専門分野の限界のため) ※「史実に沿っているか」は評価基準としない(これは、時代考証がすごくしっかりしたフィクション映画がたくさんあるから。) ・『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(テリー・ギリアム&テリー・ジョーンズ監督、1974)…中世ヨーロッパ なんといっ

    英文学者が個人的にオススメする歴史映画10作 - Commentarius Saevus
  • たいへん日本ふうなSFとしての『図書館戦争』 - Commentarius Saevus

    図書館戦争』を見てきた。あまり期待していなかったのだが意外と面白かった。留学する前にわりと夢中になって原作を読んでいたのだが、映画で見て思ったのは、この作品は実に和製SFだということである。 まず、基設定として図書館関係法規とメディア良化法が相互に矛盾をきたしているのになぜか双方の馴れ合い?でその矛盾が解決されておらず、良化委員会と図書館が双方ミリシアというか法人の軍隊というかなんというかを持っているということになっているのだが、司法の権限が強い国でこの設定にリアリティを持たせるのは無理だろうと思う。英米なんかだと法と法が矛盾してるとなれば裁判が多発しまくって少なくとも法同士の整合性が保たれる形に修正されるだろうし、たぶんそのせいで英米のディストピアSFってかなり一貫性のある法体系が一般市民を抑圧している、という設定が普通だと思う。しかしながら日だと司法の権限があまり強くないし、法の

    たいへん日本ふうなSFとしての『図書館戦争』 - Commentarius Saevus
    hanemimi
    hanemimi 2013/06/16
    「治外法権がある場所でしかも武装してるとなればまあ図書隊は僧兵である。(中略) 丘の図書館を守るため図書隊が出動するのは、まさに世俗勢力が下界から攻めてくるのに僧兵が対抗するってことなんだろうと思う」
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