両耳にかかる水圧。目を閉じてるから光はなくて、とにかく重くて息苦しい。 光を掴んだ気がした。 こじ開けた穴に腕をねじ込み、チャンスの尻尾を掴んだ気がした。 先が見えた。そう実感したから眠くならなかった。ずっと頭が興奮して、睡眠なんて必要なかった。 景色を変えるんだって意気込み、期待を寄せて広げた手のひら。 そこには何にも残ってなかった。 2020年4月2日 状況は何も変わっていない。 何の進展もみえないまま、グルグルその場を回っているうちに世界は変わり、後戻り出来ない事態になった。 オフィスと机が与えられた代償は誰もいない街に向かう行為で、慣れない仕事を頭に詰め込み、消毒液に囲まれて毎日が過ぎていった。 この選択が逃げだったのだと気付いたのは、ついこのあいだの真夜中で、情けなさが湧き上がって自分が心底嫌いになった。 昇進は、かぜ薬だ。 即効性があり熱を下げるが、その根本をなおしてはくれない