最近ミステリー小説を書いている。ミステリーとは謎がある物語である。ミステリーというジャンルは物凄く懐が広いので、謎が無くてもミステリーだったりするのだが、往々にして謎がある。そして、謎がある物語には大抵の場合「推理」がある。 この推理、問題はこの推理だ。この推理ってやつは、僅かな手がかりから様々な真相を明らかにするのだ。名探偵なんかはこれで相手の心のやわいところをボロボロ突いている。シャーロック・ホームズなんかもこれで論理の地獄車を回している。私はミステリーを書くにあたって、物語に伏線を敷き、手がかりを撒き、登場人物が推理を出来るように構成を行っている。 しかし、部屋で一人、論理のマニ車を回していると脳がゆっくりと溶けていくのだ。 このままではいけない。人間の行動を推理してはならない。論理を組み立てて人を分析してはならない。思い出を考古学の領域に明け渡してはいけない。人間の精神を貝塚のよう