三角形に、対角線はないのだ。チャンピオンズリーグ(CL)決勝での、勝負強さと奇跡の激突を見て、そんな当たり前のことをぼんやり考えていた。 今季のチェルシーやアーセナルとの対戦などで見せてきた、どちらが上かを思い知らせようとする、動物の威嚇のようなハイプレス。マンチェスター・ユナイテッドは、あの“攻撃”を続けるべきだったのではないか。 相手の脅威は十分認識していたはずだ。バルセロナを輝かせる、選手の距離感、位置取り、体の角度、何よりボールを体の一部としながら仲間と共有する技術。それらがつくり上げるトライアングルを窒息させるため、中盤に1本の横線を引いた。相手選手同士をつなぐ辺を分断するために。 立ち上がりのハイプレスの嵐はわずか10分で過ぎ去り、凪となり、やがて風向きが変わった。それさえも織り込み済みかのように、マン・Uは数学の授業に入ったのだが、厄介だったのが、複雑系の原理を持ち込むドリブ