平成24年、福岡市博多区・比恵遺跡群の125次発掘調査で、メタル成分をほぼ完璧に残した鉄塊(インゴット)が発掘された。 随伴出土品の編年から、紀元前1世紀~紀元後1世紀(弥生中期末~後期前葉)の金属遺物と推定された。 今から約2,000年前、卑弥呼の邪馬台国が成立する以前の金属遺物である。 土中から発掘される古代の鉄系遺物は、ほとんどが錆び化していてメタル成分が残るのは希(まれ)であった。 この鉄素材の重量から、内部にメタルが残存していると確信されたので、金属成分を分析する為に勇断をもって切断された。 予想通り、この鉄塊は表面の錆びを除けば完璧なメタルを残し、2,000年前の鋼の輝きを今に現した。 こうした事例は珍しく、将に奇跡的な発見であった。 紀元前後、鉄素材が渡来して国内鍛冶が始まったことを裏付ける有力な証拠となった。