[第1回] 脱官僚か、プロの誇りか。 裁判員制度の陰に、2人の最高裁長官の 「思想的対立」があった 山口進 Susumu Yamaguchi GLOBE副編集長 来月から、くじで選ばれた市民が、実際に裁判員となって法廷に入り、刑事裁判にかかわるようになる。 プロの裁判官と一緒に、被告人の運命を決める。この司法の大変革の陰に、戦後を代表する2人の裁判官の「思想的対立」があった。 「あなたが裁判員制度導入の張本人ですか」 矢口洪一氏(写真左)と竹崎博允氏 最高裁長官、竹崎博允(65)は、今春、あるパーティーの場で、そう聞かれた。 問うたのは、裁判員制度に反対する弁護士だった。 「違う」。きっぱりとした答えだった。「私は反対していた。しかし、制度ができた以上は良いものにしなければならない」 竹崎は、昨年秋、長官に就任した。最高裁判事を経ない抜擢だった。異例の人事の理由として「裁判員制度の推進役だ