昨年平成12年の「神の国」騒動で、一部の政治家や宗教者、マスメディアなどが手厳しい天皇批判、神道批判を繰り返したことは記憶に新しい。「明治政府は神道を事実上、国教とした」「神社は特別の保護を受けた」というような記事を大見出しで載せた新聞もある。戦後の実証的な近代宗教史研究はかなり進んでいるはずだが、一般社会の常識は非実証的、観念的で、千年一日のごとしというべきだろうか。 けれどもとくに意外な感じがしたのは、むしろ神道批判の嵐の中で、神道人といわれる人たちからの反論が聞こえてこなかったことである。唯一の例外として一人気を吐いたのは、皇学館大学助教授の新田均氏であった。言論雑誌で「鎮守の森は泣いている」と森発言を批判した著名な仏教学者に対して、「近代神道史および日本の歴史そのもの、神話の本質を無視している」と噛みついた。「論考は五年前の雑誌論文の切り張りに過ぎず、近年、めざましい近代神道史研究