昭和17年2月にシンガポールを占領した日本軍は、約10万名の捕虜を得た。その中にはインド兵が多く含まれており、一説には、約5万名に上ったとも言われている(戦史叢書『マレー進攻作戦』p626~627)。 これらのインド兵の中には、インド国民軍に参加し、インパール作戦に協力した者もいる一方で、ニューギニアやラバウルなど南太平洋戦線に送られ、日本軍への協力を求められた者も少なからず存在する。後者については、これまであまり注目されることもなかったように思われるので、今回は、特にニューギニア戦線に送られたインド兵について、様々な証言などを基に事実関係をまとめてみたい。 1 ニューギニア戦線のインド兵の数 まず、ニューギニア戦線に送られたインド兵の数については、「約3,000名」だったとする記録が複数見られる。 その一つに、第20師団歩兵第79連隊の兵士だった尾川正二(戦後は大学教授。著書『極限のなか