[読書] 内田樹ほか 『9条どうでしょう』 (06年3月、毎日新聞社) (挿絵はエラスムス。『痴愚神礼賛』『平和の訴え』などがある。「自由意志」を巡って原理主義的なルターと論争した。反原理主義という点では、ミーハー人文主義者・内田氏とも通じる?) 内田氏の9条論は、別に奇説ではない。むしろ保守派も含めてかなり多くの国民が共有している「本音」に近い。そうであれば、しかし、それに対する批判もありうるだろう。ここでは、『論座』2005年6月号に掲載された、法哲学者・井上達夫氏の9条論「削除して自己欺瞞を乗り越えよ」と、長谷部恭男氏の憲法論の二つを参照しながら、考えてみたい。井上9条論は、内田9条論と対立するが、長谷部氏の憲法論は必ずしもそうではないと思われるからである。 井上氏の論考は、改憲派と護憲派双方の「自己欺瞞」を批判する明晰なものだが、今は護憲派批判の部分のみを取り上げる。井上氏によれば
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