歴史の理解と和解、結城了悟(ディエゴ・パチェコ)神父 この相互対立の歴史の和解に大きな役割を果たすことになるのが、本書のもう1人の主人公、スペイン出身で日本人国籍を取り、結城了悟という日本人となったイエズス会のディエゴ・パチェコ神父だ。 結城神父は39歳で長崎に移ってから、86歳で亡くなるまで、戦国時代以来の日本に来た宣教師たちの手紙など膨大なキリシタン資料を集め、解読、翻訳し、世に紹介することに生涯をささげた。その中で、部落解放運動に関わることになっていった。それは、宗教と差別をめぐるある事件がきっかけだったという。 差別と宗教 1979年に米国で開催された第3回世界宗教者平和会議で、全日本仏教会理事長で曹洞宗宗務総長の町田宗夫氏が「日本には部落差別はない。それは100年ほど昔の話であり、今はありません」「部落解放を理由に何かさわごうとしている者がいるだけで、政府も自治体も誰も差別はして