・どこから行っても遠い町 小さな商店街を舞台に織りなされる人間模様を描いた川上弘美の短編集。11本の作品はどれも主人公が違っていて、同じ世界の出来事を異なる視点から眺める。前の話では端役だった人物が主役になって動くことで、遠い町の様子が少しずつ立体化され、濃密なイメージなっていく。 物語の中心にあるのが魚屋「魚春」。店主の平蔵は、死んだ妻の愛人だった男を二階に住まわせ仲良く二人で暮らしている。その奇妙な同居の謎が解けるまで町の住人の人生を一周するような物語構造である。登場人物達は何かしらの傷を抱えて生きている。完璧な人生を生きている人はいない。 「おれは、生きてきたというそのことだけで、つねに事を決めていたのだ。決定をする、というわかりやすいところだけでなく、ただ誰かと知りあうだけで、ただ誰かとすれちがうだけで、ただそこにいるだけで、ただ息をするだけで、何かを決めつづけてきたのだ。 おれが
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