Ⅰ 日本的雇用システムのゆくえを問う この冬、JILPT編『日本的雇用システムのゆくえ』(第3期プロジェクト研究シリーズNo.4)が刊行された。以下、執筆者を代表して、本書の取り組みの背景とエッセンスを紹介するとともに、本書を振り返っての反省と展望を記したい。 名称や定義の詳細は別として、一般に「日本的雇用システム」と呼ばれる、日本企業における長期志向の雇用・労働の仕組みが、かつて研究者や実務家、政策担当者の関心を集めていたことは間違いない。ごく手短に振り返るならば、その実態と概念は、ジェームス・アベグレンの著作[注1]、OECDのレポート[注2]などにより発見され人口に膾炙し、ロナルド・ドーア[注3]、青木昌彦[注4]などの研究者により解明され理論化されてきた。時には、日本社会論や日本人論とも結び付けられてきた。少なくとも今から20年ぐらい前までは、日本的雇用システムは、肯定的であるにせ