「こんにちは。私が米国で最も憎ま れている男、ディック・ファルドです」。 危機の直後、ファルド氏は珍しく人前に顔を出した。アイダホ州サ ンバレーにある元ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)トップ、ジム・ ジョンソン氏の邸宅でのパーティーだった。 自嘲的な自己紹介は、同氏の名前を聞いた人がまず思い浮かべるこ とから身をかわす防御手段だった。同氏の名前を耳にして人々が最初に 思うことは「ディック・ファルド:2008年9月15日に米史上最大の破綻 劇を演じ、世界の金融システムを炎上させたリーマン・ブラザーズ・ホ ールディングスの最高経営責任者(CEO)」ということだ。 パーティーはファルド氏に以前の生活を思い出させた。財界と政界 の大物たちの、見慣れた顔が並んでいた。 ファルド氏もサンバレーに家があったが、すっかり仲間外れにされ ていた。当時オバマ大統領の国家安全保障担当補佐官だったトム・ドニ ロ