「セーフティネットと集団」 [編]玄田有史+連合総合生活開発研究所 今やコロナ禍は一段落、労働市場は人手不足一色に塗りつぶされている。渦中にあった時の切迫感は、喉元(のどもと)過ぎればの言葉通り、忘れられつつはないだろうか。本書は、このパンデミックに際し、日本の安全網(セーフティネット)がどう機能し(なかっ)たのかを題材に、このような世間の風潮を静かに諫(いさ)めているように読める。様々な識者の論考に、経糸(たていと)として安全網の制度と機能の解説が、緯糸(よこいと)として現下生まれつつある新しい集団や人々のつながりが編み込まれている。そして繰り返し、私たちの生活の最後の砦(とりで)を築くには、国か個人かに丸投げせず、その中間の、人と人との関係を紡ぎだすことが大事だと教えてくれる。 前半ではコロナ禍の状況をデータで確認する。そこで明らかにされる、「第2のセーフティネット」の代表格たる求職者