2001年の商法(当時)改正により自己株式の取得と保有、いわゆる金庫株が解禁されて、すでに20年以上が経過した。株主還元や分配政策などを巡って自己株式に対する関心は、なお高い。そのこと自体は大いに結構なことなのだが、未だに様々な誤解が残っているのは、どうしたことだろう。こうした誤解がまことしやかに語られるのを聞くたびに、残念な気持ちとなる。この機会に、これらの誤解のいくつかを解いておきたい。 「新株の発行と違い、自己株式は簡単に売却できる?」 そもそも法的にも、会計的にも「資産」とは認識されない自己株式を「売却」するということ自体、言葉の誤用であるということはいったん脇に置こう。 会社法上、自己株式の「処分」は、新株の発行と同じ「募集株式の発行等」と位置付けられ、同じ決定手続、割当手続、出資の履行手続などを遵守しなければならない。 金融商品取引法上も、自己株式の処分は、「取得勧誘類似行為」