『言葉の誕生を科学する』(小川洋子・岡ノ谷一夫共著/河出書房新社)より。 (「言葉の誕生」というテーマについての、作家の小川洋子さんと動物学者の岡ノ谷一夫さんの対談をまとめた本より) 【小川洋子:先日、テレビで統合失調症の人のリハビリについてやっていたのですが、言葉の問題の面からたいへん意味深いものを感じました。患者さんが、いつも「死にたい」と言って苦しんでいるので、専門家が、「死にたいという気持ちをもっと詳しく言ってください」とアドバイスする。するとその人はすごく悩んで一生懸命考えて、「うーん、じゃあさびしい」とか、「人とつながりたい」とか、少しずつ語数を増やしていくんです。それがリハビリになっていくんですね。ある程度回復した段階で過去の自分を振り返ると、「死にたい」と言っていたときの自分は他人に対して「魔球」を投げていた、と言うようになるんです。もっと緩やかな直球を投げればいいのに、わ