巷間しばしば耳にする「最近の若い男は男らしくない」といった類いの言葉は、つとにご存知の通り、今日、初めて語られだしたものではない。この手の言説は戦後一貫して、間断なく、再生産され続けており、あるいは「男らしくない」という語りは、歳上の男が歳下の男を揶揄する際の、一つのクリシェであるとさえ言える。ただし、この点を差し引いてなお、昨今の若い男は、どうやら例外的に「男らしく」なくなっているようなのだ。 日本における男性学の草分けである伊藤公雄氏によれば、近代的な「男らしさ」とは「権力志向・優越志向・所有志向」という三つの志向によって特徴づけられると言う。同時に伊藤氏は、近代以降の社会の歪みの大部分が、この「男らしさ」に起因するものだと指摘する。極端な物言いにも思えるが、その主張にはなかなかに説得力がある。男たちは「男らしさ」のために、もがき、苦悩し、傷付け、また傷付けられてきた。より直裁に言うと