日本のように自国語で豊富な国際ニュースを読めるのは、決して当たり前ではなく、これは全国紙の大きな社会的役割の一つである。100年前、初の政党内閣を実現し、対米協調を確立した宰相原敬は、大阪毎日新聞社長として、国際報道の充実にも力を注いでいる。傑出したリアリストとして、当然の所作だったが、国の将来を誤らぬためには、良質な国際報道と論説は不可欠である。前著で米中日の外交の内実に迫った日経の秋田浩之編集委員が『乱流』を上梓したのだから、これは読まずばなるまい。 ……… 『乱流』の1~3章では、米中のせめぎ合いが描かれる。世界第2の経済大国に躍進した中国は、軍備増強に励み、東シナ海と南シナ海を勢力圏にすべく、周辺諸国への圧迫を始める。オバマ政権は、話し合いによって協調体制を築こうとするものの、首脳同士でも解決できないことを悟り、対立路線へと変わっていく。そして、4章で、対抗上、米国が日本との関係を