松永伸司『ビデオゲームの美学』の帯には「ビデオゲームは芸術だ!」というキャッチフレーズが用いられている(松永さんではなく編集者の言葉らしい)。 今回訳出して紹介するのは、これとは対照的に、「芸術はゲームだ」と題されたティ・グエンの記事である(なお、ビデオゲームではなく広義のゲームが扱われている)。 グエンの問いは簡単かつ素朴だ。 芸術鑑賞において、なぜ私たちは正しさ(正しい理解や判断)に関心をもつのか。 なぜ正しさを気にせず、自由に、好きなように楽しまないのか。 この問いに対して、グエンはゲームにおけるモチベーション構造を分析し、それを芸術鑑賞に応用することで応答を試みている。 議論を通して浮かび上がるのは、芸術鑑賞とゲームプレイとの共通点、また芸術鑑賞と正しさに関心をもつ他の多くの領域(科学や倫理など)との相違点である。 議論の過程でなされる、「バカゲーム」と呼ばれる種のゲームやロックク