安倍晋三首相の改憲論は不誠実だ。「自衛隊を憲法に明記することで自衛隊違憲論に終止符を打つ。自衛隊の権限は変わらない」と主張しているが、いくつも矛盾とごまかしがある。 自衛隊という組織の名前を憲法に書くか、書かないかというのは本質的な議論ではない。問われてきたことは、自衛権に基づいた自衛隊の武力行使と戦力不保持を定めた9条2項との整合性だ。これを整理しない限り、違憲論争は消えない。 首相はよく、自衛官のお父さんが子どもに憲法違反なのか、と聞かれたという話をする。しかし、自衛隊を憲法に明記すれば、「お父さんの会社」(自衛隊の組織)は違憲ではなくなるかもしれないが、「お父さんの仕事」(自衛隊の武力行使)についての違憲論は消えない。