異なる方向から言語の問題に向き合ってきた2つの孤峰が激突.井筒俊彦,服部四郎,亀井孝など大言語学者たちの知られざる真実,記述言語学や意味論研究の意義,チョムスキーへの徹底批判,ソシュール以後の言語学の可能性,さらには漢字論や英語教育についても熱論.学問の喜びと厳しさを語りつつ,輝きを失った言語学に檄を飛ばす. ■著者からのメッセージ このたび単行本の形で2人の対談をまとめたいという再度のご提案のあったとき,私は喜んで是非やりましょうとお答えした.そのわけは,田中氏を存じ上げるようになってから,私はまことに遅まきながら氏の著作を次つぎと読み始めたのだ.そしてその結果,私は田中克彦という言語学者は言語という最も人間的な対象を,科学的と称する狭い範囲の,干からびた人間味の乏しい領域に押し込めようとする世の多くの言語学者とは違って,言語を使う庶民の喜びと苦しみ,大国の政治的強圧の中で消滅の一途を辿