今回は修辞表現としての皮肉(irony)をとりあげたいと思います。皮肉の一般的な言語学的定義は、「言っていることと反対のことを意味する表現」ということになるでしょうか。たとえば、授業に遅刻してきた学生に「早いな」と言うような場合です。このとき、重要なことがいくつかあります。まず、反対のことを言っているということが聞き手に明らかでなくてはなりません。つまり、話し手も聞き手もその逆の事実を知っていることが前提になります。また、文字通り「遅いな」と直接的に表現する場合にはないなんらかの表現効果が生まれるということもポイントになります。さらに、皮肉であることを明示するために強勢やイントネーションも文字通りの解釈の場合とは異なることにも注意したいと思います。 事実と反することを言うには否定文を使うのが手っ取り早いやり方で、どんな文も否定表現が可能ですが、以下では、肯定表現でそのような皮肉を表す決まっ
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