幻想小説神髄―世界幻想文学大全 (ちくま文庫) 筑摩書房Amazon 漏れ聞くところによれば、作品の配列は生年順なのだという。しかしとてもそうは思えぬほど、この並びは巧緻を極めている。なにしろ開巻いきなりジャン・パウルが神の不在を告げるのだから。 ここで拙豚のようなロートルはありし日の『幻想と怪奇』が卒然と思い出され、吐胸を突かれる。この作品が『幻想と怪奇』に掲載されたのは、おりしも同誌が季刊から月刊へと、素人目にもおぼつかない足取りで迷走を始めたときだった……人の心の弱みにつけこむ、卑怯きわまる始め方と言わずしてこれを何と言おう。 その後、ノヴァリス、ティーク、ホフマンと続く怒涛のドイツロマン派ラッシュのあと、舵はおもむろにイギリスへと切られる。イギリスというのは島国だからか、それとも奇人変人の国だからか、大陸勢と並べるととかく違和感ばかりが目立つ。しかし本書の場合、絶妙のブリッジを果た