ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (3)

  • セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を

    仕事の都合で別の業種の女性と幾度か会った。弊社の人間が、と彼女は言った。弊社の人間が幾人かマキノさんをお呼びしたいというので、飲み会にいらしてください。 私は出かけていった。私は知らない人にかこまれるのが嫌いではない。知らない人は意味のわからないことをするのでその意味を考えると少し楽しいし、「世の中にはいろいろな人がいる」と思うとなんだか安心する。たいていはその場かぎりだから気も楽だし。 彼らは声と身振りが大きく、話しぶりが流暢で、たいそう親しい者同士みたいな雰囲気を醸し出していた。私を連れてきた女性はあっというまにその場にすっぽりはまりこんだ。私は感心した。彼女は私とふたりのときには同僚たちに対していささかの冷淡さを感じさせる話しかたをしていた。 どちらがほんとうということもあるまい。さっとなじんで、ぱっと出る。そういうことができるのである。人に向ける顔にバリエーションがあるのだ。私は自

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  • 働いているだけで背後から石を投げられる話 - 傘をひらいて、空を

    だからさあ槙野さんみたいな人は俺の嫁さんみたいな人に感謝してほしいわけよ。突然の大声に視線を向けるとすこし離れた席に私の嫌いな同僚がいて私の嫌いな笑いを笑っていた。この人と話をすると不愉快になると入社当初から思っていた。幸いなことにふだんの仕事で直接やりとりすることはごく少なく、あっても事務的なやりとりだけですむ。 私は情熱的に人を憎むことがあるが、それは戦うべき何らかの理由があるとき、あるいは嫉妬などがあるときだ。彼はその対象ではなく、ただいると不愉快なのでいないほうがいいと、そう感じている相手だった。そういう相手とは同じフロアに勤めていてもなぜだかあんまりすれ違わない気がする。そう言ったら昔、そりゃあ脳みそがよぶんなものを認識しなくていいようになにか処理しているんだ、と言われたことがある。私の脳にはそんなに便利な機能がついているのかなあと思った覚えがある。そんなだから今日も、その人がそ

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  • 他人の偽善の遇しかた - 傘をひらいて、空を

    私はちいさく手を振る。彼女はタブレットに目を落としてほほえんでいる。私に気づかない。私はそっと彼女の横にまわる。突然目の前に顔を出して驚かせようとすると彼女は片眉を上げて私を見、子どもか、と冷たく言う。それからにっこりと笑う。くっきりと刻まれるきれいな笑い皺、骨のかたちの透けて見える長い指、そこにつけられたいくつもの派手な色の石、よくデザインされたいかにも高価な衣類。私も笑う。そうして尋ねる。なに見てたの、うれしそうだった。講演の感想だよと彼女はこたえる。 彼女はいわゆる社会起業家だ。この数年で少し有名になったようで、そうしたことに関心のある企業や学校で講演などもしているということだった。感想は良い、と彼女は言う。学校行事を切り抜けたい子どもが通り一遍のせりふで講演者を褒めそやしている文章。講演から連想された自分の体験を綴り、もはや感想ではない文章。ときに激烈な批判。そういうものをひっくる

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