ブックマーク / shosetsu-maru.com (3)

  • 作家を作った言葉〔第18回〕水沢なお | 小説丸

    「一番遠くの街に住むひとと結婚しよう。種の多様性のためには、同じ街に住むひとと子孫を残すより、そのほうがいい」 理科の先生がそう言ったので、火星に行かないといけなかった。水のある惑星には、生命、ひいては街が存在するかもしれない。そこに、わたしと子孫を残すべきだれかがいるのだろうか。火星にも学校があって、砂色のカーテンが陽光でふくらんで、アルコールランプの炎は青く燃えて、同じように〝よりよい生殖〟を教わるのだろうか。 先生の言うことはいつも正しかった。ただ、正しかったはずの言葉はいつの間にか、やわらかい風がすり抜けるように忘れてしまって、正しいかどうかわからない言葉ばかりが、こうやって頭の底で白く光る。 「髪の毛を結びなさい」 と体育の先生から言われて、高校生の頃、泣いてしまったことがあった。自分で結ぶことができなかったから、水泳の後は器用なクラスメイトに髪を結んでもらっていた。濡れた髪を触

    作家を作った言葉〔第18回〕水沢なお | 小説丸
  • ニホンゴ「再定義」 第3回「ガンダム」 | 小説丸

    当連載は、日在住15年の〝職業はドイツ人〟ことマライ・メントラインさんが、日常のなかで気になる言葉を収集する新感覚日語エッセイです。 名詞「ガンダム」 そう、ガンダムは「日語」だ。しかも単なる固有名詞ではない。おおまかにいえば1990年以降に成人化した日人の「大きな原体験」のひとつであり、絶大な知名度を誇り、私が直接接した日人(文化的サンプルとしてそこにいくぶん偏りがあるのは間違いないが)では、悪く言う人を見たことがない。 そんなこともあって「ガンダム」という単語自体は、ドイツを含む諸外国でもそこそこ認識されている。かのデザイン巨匠シド・ミードが∀ガンダムをデザインしたとかあるし、お台場の実物大ガンダムは「トーキョー観光」の名所として有名だし。 だがそのコンテンツとしての文化的価値と意味を、的確かつ端的に外国人に伝えるのは、実はなかなか難しい。単語の知名度とは裏腹に「ガンダム 海

    ニホンゴ「再定義」 第3回「ガンダム」 | 小説丸
  • 詠坂雄二さん『君待秋ラは透きとおる』 | 小説丸

    綾辻行人や米澤穂信など名だたるミステリー作家たちが偏愛する書き手が、詠坂雄二だ。かつて「今、もっともひねくれた新鋭作家」と帯に銘打たれた過去からも明らかなように、格ミステリーの定型を逸脱する作品群ばかりを世に問うてきた。 その道のりを知る読者にとっても最新長編『君待秋ラは透きとおる』は度肝を抜かれるものだったろう。作は純然たる「異能バトルもの」なのだ。 人智を超えた特殊能力を、運命的に手にした者同士が覇権を巡って争い合い、時に手を組んで大いなる敵に立ち向かっていく──。いわゆる「異能バトルもの」は、山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』を起源に持ち、現在はマンガやアニメ、ライトノベルのシーンで一大ジャンルとなっている。このジャンルに、気鋭の格ミステリー作家が初挑戦した。 「次はまっすぐなエンターテインメントを書きたい、という気持ちがあったんです。一つ前の『T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡

    詠坂雄二さん『君待秋ラは透きとおる』 | 小説丸
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