ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/joyce (6)

  • 貧しい人ほど「割増金」を払い、中・上流は「無料特典」を享受する

    <イギリスの富裕層貧困層より10年長生きして、年金を長く受け取り医療保険を長く利用する> ロンドンへ向かう電車の中で僕は、「poverty premium(貧困割増金)」を改善しようとの運動についての記事を読んだ。これはイギリスではよく知られた問題。必要なものを手に入れるために、貧しい人々ほど多くのカネを払わなければならない仕組みを指している。 分かりやすい例は、彼らがローンを組むときにずっと高い金利を設定されること。だからもしも彼らの家の給湯設備が壊れたら、新たな2000ポンドのボイラーを購入するカネを借りるために、僕なら5%の金利を課されるところ、彼らはおそらく24%の金利を払わなければならないだろう。そして言うまでもなく、そもそもそれをすぐに買えるだけの貯金がある人だったら、シンプルに一括で購入してローンも金利も必要ないだろう。 貧しい人々は時に支払いが遅れたり、滞ったりして、その

    貧しい人ほど「割増金」を払い、中・上流は「無料特典」を享受する
  • 「学費無料なんか不可能」と若者に説教するイギリスの老害

    学生ローンに苦しむ若者たちは、近く労働党政権が誕生して何とかしてくれると気で信じている(イベントでコービン支持をアピールする若者たち) Dylan Martinez-REUTERS <多額の学生ローンに苦しむイギリスの若者たちは、近い将来労働党が与党になって学生ローンの負債を軽減してくれることを期待している> 前回のコラム「大学も就職も住宅も『損だらけ』のイギリスの若者たち」では、説明しきれなかった注意点や例外がたくさんあった。「最大で」とか「多くの」「一部の」と条件を付けるべき個所も多かった。文章中に「*」を付けて、最後に脚注で説明したかったくらいだ。 例えば、「*スコットランドの大学に在籍するスコットランド人学生の場合は学費無料」「*RPI(小売物価指数)プラス3%の利息が課されるのは、2012年以降に大学に在学していた学生のみ」「*学費は2012年までは『たったの』3000ポンドだ

    「学費無料なんか不可能」と若者に説教するイギリスの老害
  • 大学も就職も住宅も「損だらけ」のイギリスの若者たち

    イギリスの大卒者の多くは多額の借金を抱えているが、それに見合う職には就けない edella-REUTERS <イギリスの若者が大学卒業時に抱える借金は平均735万円。それなのに仕事の給料は上がらず、住宅価格はうなぎのぼり、と損ばかり> イギリス生活では、借金は大きな現実の一つだ。個人的な問題というだけでなく社会的・政治的な問題で、さらには世代間の問題でもある。 6月の総選挙でジェレミー・コービン率いる労働党が(彼らが思うところの)「成功」できたのも、学生の借金問題への対応を公約に掲げたのが大きな理由だったことは間違いない。僕の考えではこれは、守る必要がないだけに、簡単に約束できるものだったと思う。どうせ労働党が選挙に勝利して政権を奪取することはあり得なかったからだ。 だが、労働党の選挙公約が若者たちの心をつかんだことは疑いようもない。今の若者たちは借金問題にひどく悩まされているからだ。 イ

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  • 最大野党(のはず)の英労働党が崩壊寸前

    <イギリスの野党・労働党党首にジェレミー・コービンが再選された。しかしコービンはあまりに左翼的で、筋金入りの社会主義者にしか受けず、中間層の心はつかめそうにない>(写真:労働党党首に再選されたコービン) イギリスのEU離脱(ブレグジット)の大騒ぎのなか、世界はこの国で起こっている同じくらい重大なできごとに気付いていないんじゃないかと思ってしまう。最大野党・労働党が崩壊寸前なのだ(と、僕には感じられる)。 目下、イギリスは労働党のニュースでもちきり。9月末に党大会で、ジェレミー・コービンが党首に再選されたからだ。コービンはほんの1年前に初めて党首の座に就いたばかりだが、今回の党首選では仲間の議員たちから対立候補を立てられていた。 僕にとっての問題は、1年前に彼について書いたコラムに新しい事実を何も加えられそうにないことだ。あのとき僕は、コービンが党をまとめるうえで問題を引き起こしそうだと予測

    最大野党(のはず)の英労働党が崩壊寸前
  • 英労働党トップに無名(?)強硬左派、の衝撃

    ここのところ、コメンテーターのこの手の言葉を繰り返し耳にしている――「ジェレミー・コービンが労働党党首に選ばれるなどと3カ月前に言われたら、私はそいつを面と向かって笑い飛ばしていただろう」。 正直に認めよう。もしも僕が3カ月前にそんな話を聞かされていたら、笑い飛ばすどころじゃなく、こう答えたはずだ。ジェレミー・コービンって誰? コービンがイギリス最大野党・労働党の党首に選ばれたことは、シンプルな言葉で表現するなら「とてもびっくりする」出来事だった。彼は強硬左派で異端児の非主流派議員で、党首選の候補者になれたのも、彼がいれば討論が活性化するだろう程度に思った議員が何人か推薦者に加わってくれたからだ。 ところがそれどころか、こんなにも仰天の結果を呼ぶ大規模な地殻変動が起こることになってしまった。 民主主義政治は通常、中間層の浮動票獲得を狙って動くもの。よほどの例外的な状況でもないかぎり、従来の

    英労働党トップに無名(?)強硬左派、の衝撃
  • 予測不可能で大波乱の英総選挙

    「予測はするな。特に未来のことは」。これは、イギリスではけっこう有名なジョークだ。そして、格言めいてもいる。物事は時として、期待とは違う方向に進むものなのだから。 それを念頭に置くと、僕は5月に行われるイギリス総選挙について、あまり大胆な予測はしないほうがいい、ということになる。でも、この選挙に懸かる問題を読者に理解してもらうために、何とかして重要なポイントを伝えたいと思う。 今回の選挙では、明確な勝者が誕生することはあり得なそうだ。現政権は保守党と自由民主党の連立政権で、5月の総選挙でもいずれかの政党が単独過半数を獲得するのは難しそうだ。 僕の人生の大半において、イギリス総選挙は根的に、労働党と保守党の一騎打ちであることが多かった。でもこの常識は、もう通用しない。保守党は反EUを掲げるイギリス独立党(UKIP)のせいで弱体化しつづけている。労働党はイギリスからの分離独立を叫ぶスコットラ

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