「動くな! 動くとこの女を殺すからな!」 そう言いながらバスジャック犯が咲子さんを引きずるように歩き、運転席の隣まで移動する。 「いいから、バスはこのまま走らせてろ」 運転手への命令を聞き、このままだと一周目と同じく、桜木町駅で爆発してしまうぞ、と内心で舌を打つ。 「お前、なんでバスジャックが起こるって知っていたんだ? あいつの仲間なのか?」 「まさか。あの人質になっているのは、俺の元恋人ですよ」 「だったらなおのこと、グルなのかもしれないじゃないか」 「確かに」と苦笑し、「いや、彼女のことは少ししか恨んでませんよ」と返す。 「少しは恨んでるんだな」と探偵が苦笑した。 俺は話すか話すまいか躊躇したが、どうせ話したところで信じてもらえないだろうし、と思って口を開いた。 「実は、このバスに乗るの三回目なんですよ」 「あかいくつバス、にか?」 「そうじゃなくて、この同じバスです。タイムループ?