俺は四回、同じバスに乗った。四回バスジャックに遭い、四回死んだ。 時を繰り返して四回も死ねば、少しずつ慣れてきて、考えをまとめられるようになった。慣れとは恐ろしい。 そこで得た情報は、俺を振った恋人が乗っていること、バスジャック犯人が次のバス停で乗って来ること、駆け落ち中のお嬢様とガタイの良い男が乗っていること、探偵と警察関係者が乗っていること、だ。 警察が乗っている、という情報は大きい気がする。警察が乗っているのだから、犯行を続けても無駄ですよ、という抑止力にすることはできないだろうか。 いや、審判から「それ反則」と注意されて大人しくプレーを止める選手のように、犯人がいう通りにバスジャックをやめてくれるとは考えにくい。 だが、俺にできることはまだあるはずだ。 営業スキル、根回しを今度は運転手に行うことにする。 バスに乗り込み、運転手に「すいません、港の見える丘公園前の交差点で、急ブレーキ