henshu_ckrのブックマーク (27)

  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#25-15周目 行け! 行け! 行け! 行け! 行け!|henshu_ckr

    友達になろう!」 車内に声が響いた。声の主を見る。四方山が両手をぎゅっと握りしめ、辛そうに眉を歪めている。もう一度「私と、友達になろう!」と言った。 「でも、僕、爆弾テロ犯ですよ。おじいさん、警察なんじゃないんですか?」 「元警察だ。それに、君は一人なんだろ? 友達がいないんだろ? 家族といても息苦しいんだろう? だったら私と友達になろう。将棋を一緒に指してくれる相手が欲しかったんだ」 「将棋、知らないですよ」 「私が教えてあげるから」 「そんな、僕なんか」 「君は、生きていていいんだよ」 友達になろう、俺には何故そう言えなかったのだろうか。困っている人がいたのに、何故声をかけられなかったのだろうか。俺も「俺とも友達になろう。ライブをするからさ、聞きに来てくれよ」と伝えると、バスジャック犯だった岡も「俺でもよければ、話を聞くぜ」と声を飛ばした。 咲子さんが、小突いてくる。よかったね、と

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#25-15周目 行け! 行け! 行け! 行け! 行け!|henshu_ckr
  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#23-15周目 一つだけお願いしていい?|henshu_ckr

    あかいくつバスを見ながら、途方に暮れる。 テロ犯の生い立ちは壮絶だった。俺が一体なにをすれば、彼を止められるだろうか。彼のスマートフォンを取り上げても、きっとタイマーでバスは爆発する。 神様が何故俺にこの力を授けたのか知らないが、俺にまだ立ち向かえと言っているのだろうか。 俺はいつの間にかバスに乗り込み、咲子さんの隣に腰掛けていた。咲子さんが顔を上げ、口を開く。 「森田くんじゃん、久しぶり。何年振り?」 「五年ぶりだね」 「なんだか、様変わりしちゃって、びっくりしちゃったよ」 「まあね、今は会社員だから。三年目だよ」 「そろそろ辞めたくなる時期だね」 「辞めたい時期は、入ってからずっとだけど」 そう返すと、咲子さんは頬を緩めた。 その笑顔を見ていたら、自然と胸の中から言葉が溢れ、口から飛び出してしまった。 「咲子さんは信じないと思うけど、このバスは次の停留所でバスジャックされるんだ。おまけ

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#23-15周目 一つだけお願いしていい?|henshu_ckr
  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#22-14周目 君が犯人だったのか|henshu_ckr

    十二月の風にも慣れたな、と俺は思わず笑みをこぼす。 目の前にはあかいくつバスが停留している。親父が「乗るのか? 乗らないのか?」という視線を向けてくる。俺はパスケースをタッチして清算をしながら、親父を見つめる。 親父と目と目が合う。 「お疲れ様」 そう言って、俺は歩を進める。菜々子嬢のコーヒーが、スーツのすそにかかる。 「すいません!」 不安の滲んだ顔で俺を見る菜々子嬢と、その隣にいる町山をそれぞれ見てから、「気にしないでくれ」と言って、進む。 後部ドアの前に立つ四方山に、「すいません」と言って道を作ってもらい、俺は咲子さんや釣り人の格好をした叶の隣を素通りし、正義漢の隣に腰掛けた。 五席並びで、なぜわざわざ隣の席に? と不審に思っているのだろう。そういう視線を受ける。 「君だったのか。全然気づかなかったよ」 「なんのことですか?」 俺と同じ、アラサーくらいの男だ。朴訥とした、優しそうな人

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#21-13周目 浮気調査探偵の名推理|henshu_ckr

    十二月の風にも、もう慣れた。バス爆発のせいで暑かったり寒かったりで、体がおかしくなりそうだ。 目の前のあかいくつバスが、可愛らしいデザインなことにも、妙な苛立ちを覚える。 あかいくつバスに乗り込む。 バスジャック犯の目的と、乗り込んで来るまでの経緯はわかった。彼には病気の妹がいて、その手術費用をなんとかしようとしていただけで、もともとバスジャックをするつもりはなかった。 そしてバスジャック犯と爆弾テロ犯は別だった。叶と名乗った男の予想が正しければ、爆弾テロ犯は彼の運んでいる死体と彼を消そうとしている、というものだった。 だが、彼の途中下車を予想できるものだろうか? 俺は、菜々子嬢のコーヒーを避けながら、こういうことを相談できる唯一の人間のもとに、真っ先に向かった。 「なんだ? 俺になにか用か?」 くしゃくしゃ頭の探偵、立花だ。 「あなたに相談をしたいことがあって来ました。今、二人の駆け落ち

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#20-12周目 ただの釣り人じゃないでしょう?|henshu_ckr

    「おい釣りバカ、お前こっちに来いよ!」 バスジャック犯が、クラスでひとりぼっちの生徒に声をかけるみたいに、釣り人に声をかけた。いや、釣り人の格好をしているだけで、業は別にあるということを俺は知っている。 釣り人は、自分が指名されているとは気づいていない様子で窓の外を眺めている。さすがに、自分は無関係だと思っているだろうし、このままバスジャックが解決されないと、クーラーボックスの中に死体が入っていることがバレてしまうのではないか? と考えを巡らせているのだろう。 「釣り人さん! あなたですよ!」 俺が声をかけると、釣り人が自分が釣り人であったことを思い出すように自分の格好を見てから、俺か? と自身を指差した。 首肯し、手招きをする。 チーム集合で、作戦会議だ。 釣り人は、しぶしぶといった様子で立ち上がると、こちらにゆっくりとした足取りでやってきた。線が細く、腕と足が長い、顔色の悪い男だ。俺

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#19-12周目 そのお金、どうにかできるかもしれませんよ|henshu_ckr

    十二月の風が吹き抜ける。泣きはらしたことによるダメージが残っていないのが、救いだった。目の前に停車しているあかいくつバスに乗り込み、「お疲れ親父」と声をかけ、パスケースをタッチして清算をすませる。 菜々子嬢のコーヒーをかわして、咲子さんの隣に座る。 「森田くんじゃん、久しぶり。何年振り?」 「五年ぶりだよ。ちょっと大事な話があるから、後ろの席にいかないか?」 「いいけど、わたし次で降りちゃうよ?」 「すぐに済むから」 そう言って誘い出し、バスの最後部座席へ移動する。窓側に咲子さんを座らせて、ふーっと息を吐き出す。 「大事な話ってなに? バンドのこと? それとも、そのスーツ姿のこと?」 「咲子さんに話したいことはたくさんあるんだけどさ、まだ言えないんだ」 「呼び出しておいて、なんなの一体?」 「実は一つ、お願いがあってきたんだ」 「お願い?」 「これから、ちょっと大変なことが起こるんだ。それ

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#18-11周目 俺はただの運転手じゃない|henshu_ckr

    目を開けると、あかいくつバスが停車している。 どうやら、神様は俺を逃がしてくれるつもりがないらしい。 じっとバスを見つめる。 重い足取りで、バスに乗り込んだ。パスケースでタッチをして清算を済ませ、運転手のそばに立つ。 バスが扉を閉めて、ゆっくりと発車する。 俺はバスをよく利用する。景観が良いからでもあるし、パワハラ上司に会うまでに遠回りをしたいからでもあるが、なにより父親が乗っているからだ。 「なあ親父」と声をかける。 俺が九歳の時に、父親の浮気が原因で離婚し、以来俺は父親と会っていなかった。その父親と偶然再会したのは、このバスでだった。二十年ほど経つが、相手が自分の父親だとわかった。俺の子供の頃の苗字である、「土門《どもん》」という名札もしてたし。 「お前が、いつおれに呼びかけるんだろう、とおれはいつもビクビクしながら運転していたよ。まあ座れ」 俺は親父に促され、運転席のそば、左前輪上の

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#17-10周目 一番くだらねえクソッタレな人生|henshu_ckr

    十二月の風が、今度はなんだかやけに染みた。目の前のあかいくつバスに、もう乗らなくてもいいんじゃないか、という気さえして来る。 別に、彼女を救ったから、どうこうということを期待していたわけではない。困っている人がいたら、助けたい、という気持ちに近い。そう思っていたのだが、俺はやはり、咲子さんを助けて彼女に優しくされ、感謝されたいと思っていた。 それが、蓋を開けてみたらどうか。 彼女を助けるために行動していたのに、彼女はバスジャック犯になり、昔のことまで引っ張り出されてなじり倒された。 「お客さん、乗らないんですか?」 運転手に声をかけられ、俺はふーっと大きく息を吐き出すと、「乗るよ! 乗ってやるよ!」と大股でバスに乗り込んだ。 「あんたは、いつもぐるぐる同じルートを運転してるだけの仕事だ。楽でいいよな」 「声をかけてきたと思ったら、突然なんだよ、その言い草は」 ふんっと鼻息で返事をする。今度

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  • 『爆破ジャックと平凡ループ』感想&イラスト大募集!|henshu_ckr

    如月新一『爆破ジャックと平凡ループ』、残す所とうとう9回となり、衝撃の最終回へ向けて盛り上がってまいりました。そこで新企画! 感想&イラストを読者のみなさまから大募集して、更に盛り上げていきたいと思います!! 1.感想募集について 『爆破ジャックと平凡ループ』に関する感想を大募集! ご感想をいただいた方の中から抽選で5名の方に、連載終了後、作品電子書籍化の際の特典のひとつを予定している『爆破ジャックと平凡ループ』のプロットをプレゼントします!できあがった編とプロットを照らし合わせながら読むと、作品を完成させるコツが分かります。特に作家志望の方にはおすすめです! 2.イラスト募集について 『爆破ジャックと平凡ループ』に関するイラストを大募集! 投稿して頂いたイラストの中から編集部が選ばせていただき、これまでの回や今後の回の挿絵として採用させていただきます!! ※漫画家のつのだふむ先生に以

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#16-9周目 選手交代でバスジャック|henshu_ckr

    世の中で知らないうちにバスジャックブームでも起こっているのだろうか。 君が爆弾テロ犯だったのか? と目眩がし、膝から崩れ落ちそうになる。 何故なのか? 俺と別れてから変な宗教にハマってしまったのだろうか。 「咲子さん、なにしてるの」 「見てわかるでしょ? 選手交代でバスジャックしてるのよ」 「なんでまた。どうしたんだよ」 「とにかく、誰も動かないで!」 「俺になら教えてくれてもいいじゃないか」 「私とあなたはもう終わってるのに?」 そこまで冷たいことを言われるとは思っていなかったので、傷ついた。 この新展開はなんなのだ。当に、俺はもう宇宙人が出てきても驚かんぞ、というやさぐれた気持ちになってくる。 車窓を見ると、港の見える丘公園の中にある近代文学館の前で、Uターンをするところだった。窓の外には、花畑が見える。このままみんなでピクニックにでも行こうよ、と提案しても咲子さんは許してくれないだ

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  • n81950080250f

    バスジャックに爆弾テロに死体と来たものだ。このバスに宇宙人や超能力者が乗っていても俺は驚かんぞ、と思ったけど、俺は自分が超能力者のようなものか、と気づいて大きくため息を吐いた。 なにがどうして、こんなトラブルに巻き込まれているのだろう。 昼過ぎの商談さえ成功していれば、このバスに乗らずに済んだのに、と思ったけど、俺が乗らなかったところでこのバスではジャックとテロが起こる。 このバスには別れたとは言え、咲子さんも乗っているし、駆け落ちカップルにも多少の情が湧いてしまっている。 乗るの? 乗らないの? という運転手からの視線を受けながら、あかいくつバスに乗り込んだ。 これで、九回目だ。 さっきは、テロ犯を見つけようと思って失敗した。探偵のギターケースや、釣り人のクーラーボックスが怪しいと思っていたが、既にどこかに爆弾は仕掛けられているのだろうか。 観察してみたが、それらしいものは見つからなかっ

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#14-8周目 開けたら終わりのクーラーボックス|henshu_ckr

    同じ時間を繰り返し、同じバスに乗り、バスジャックに遭っている。 だけど、バスジャック犯と組んで、事件を解決しようとしているのは初めてのことだ。 「で、お前はどいつが怪しいと思うんだよ」 岡に訊ねられ、そうですね、と俺は口を開く。 「あのギターケースとクーラーボックスは怪しいですよね」 なにしろ、バスを吹き飛ばすくらいの爆弾だから、サイズもあるだろう。 くしゃくしゃ頭の男、立花は城ヶ崎家に雇われた探偵であるから、おそらく違うだろう。でも、念のため、確認しておきたかった。あと、こんな時でも、ギターを見たいという性が出てしまっているのかもしれない。 「おい、お前」 バスジャック犯が、ナイフの先を立花に向ける。立花は、教師に指名された学生のように、俺? と自分のことを指差した。教科書忘れてるんだけど、とでも言いたげな、バツの悪い顔をしている。おそらく、探偵だから目立ちたくないのだろう。 「そのギ

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#13-8周目 時にはバスジャックを一緒に|henshu_ckr

    いつもの風が吹き抜けて、目の前のあかいくつバスの扉が開く。運転手からの視線を受けて、俺はバスに乗り込んだ。 七周目で、俺は自分が大きな誤解をしていたことを思い知った。 バスジャック犯と爆弾テロ犯は別にいる。 思い返せば、道理で、と思うことが多い。バスジャック犯が取り押さえられているのに、起爆できたのもおかしかったし、人が降りようとしたら爆発していた。 バスジャック犯の目的は妹の手術代金だった。 だが、爆弾テロ犯の目的はなんなのだろうか? 宗教絡みなのか、抗議活動なのか、今持っている情報では推測しきれない。 それに、一体誰が爆弾テロ犯なのかもわからない。 なんとか、爆弾テロ犯だけでも識別できないだろうか。 「すいません!」 ぼーっとしていたから、菜々子嬢にまたスーツの裾にコーヒーをひっかけられてしまった。いかん、気を引き締めなければ、と思いつつ、咲子さんの隣に腰掛ける。 「森田くんじゃん、久

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#12-7周目 大きな勘違い|henshu_ckr

    バスジャック犯、岡のリュックサックからは、爆弾ではなく葉っぱの詰まったジップロックが散乱した。おそらく脱法ドラッグだろう。 それを見下ろす岡が大いに落胆するのを見て、俺はどういうことかと首を傾げる。 バスに乗り込んで来た時、岡は俺が滑川なる悪党の手下なのではないか、と心配していた。 「いっつもこうだ、チクショウ。オレは肝心な時にやらかす」 バスジャック犯の、弱々しい声が漏れ聞こえる。 もしかして、と俺は想像を巡らせ、口を開いた。 「もしかして、取引の横取りをしたんですか?」 目出し帽の間から覗く瞳が俺を見据える。わずかに潤んでいて、あぁその通りなのだな、と予想が確信に変わった。 「脱法ドラッグの取引があって、現金を奪うはずが、間違ってドラッグの方を奪って来ちゃったんですね」 「ちゃった、とか言うんじゃねえよ。恥ずかしくなるから」と岡が弱々しく漏らす。 手術代金を、違法な取引から強奪

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  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#10-6周目 つまらない男になるぞ|henshu_ckr

    「おいお前ら、なんの話をしてるんだ!」 痴話喧嘩に興味を持ったわけではないだろうけど、剣呑な雰囲気だったことを察知した岡に訊ねられる。 大変な時に、身内がすいません、という気持ちになりながら、「彼女、別れた恋人なんです。五年ぶりに偶然再会して」と釈明する。 「五年ぶりの再会に水を差して悪かったな」 「いえ、昔のことを責められていたんで、助かりました」 お前も大変だな、と同情してもらえるかと思ったが、世の中そんなに甘くはなく、「そうかよ」の一言で済まされてしまった。 咲子さんは手近な席に座り、じっと俺を見つめている。 ほら見ろ、俺を信じて降りておけばよかったじゃないか、と視線を返す。 だが、ここでふと営業のスキルの一つを思い出した。 昔話をする、というものがある。それも、子供の頃の話だ。 自分がどんな少年だったのかを話し、親近感を覚えさせる。子供だったけど立派に成長し、そんな俺が自信を持っ

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#10-6周目 つまらない男になるぞ|henshu_ckr
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    henshu_ckr 2018/02/25
    本日10回目!6周目にして分かった犯人のバスジャックに至った切ない訳とは•••。覆面編集者大賞受賞作家、如月新一がお送りするタイムリープ・スペクタル!次回更新は3/1夜!感想お待ちしています!
  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#9-6周目 大事な話の途中だったから|henshu_ckr

    バスの中に執念深い元警官が乗っているということはわかったが、交渉には向いていないようだった。 十二月の風に身震いしながら目を開くと、目の前にはあかいくつバスが停留していた。運転手の顔を見て、またか、と思いながら俺はバスに乗り込んだ。 これで、六周目のバスになる。 警察は頼りにならなかったから、やはり自分の力でバスジャック犯をどうにかするしかない。 乗り込み、運転手に「港の見える丘公園で急ブレーキを踏んでください」と頼む。わけがわからないという顔をされたが、これからバスジャックが起これば、俺の意図を汲んでくれるだろう。 次は菜々子嬢のそばに移動する。さすがにもう、菜々子嬢のコーヒーをよけることはできた。 「あなたたちは駆け落ちをしていますよね?」「どうして知ってるんですか?」「俺は城ヶ崎家に雇われた探偵です。見逃す代わりに、協力してほしいことがあります」「なんでしょう」「町山さん、港の見える

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#9-6周目 大事な話の途中だったから|henshu_ckr
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    henshu_ckr 2018/02/22
    本日9話目!とうとうループは6周に突入。元恋人の咲子さんをせめて助けたいという主人公の思いは思いがけない方向に・・・.覆面編集者大賞受賞作家、如月新一がお送りするタイムリープ・スペクタル!
  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#8-5周目 元警官は目元を覚えて邪魔をする|henshu_ckr

    俺は四回、同じバスに乗った。四回バスジャックに遭い、四回死んだ。 時を繰り返して四回も死ねば、少しずつ慣れてきて、考えをまとめられるようになった。慣れとは恐ろしい。 そこで得た情報は、俺を振った恋人が乗っていること、バスジャック犯人が次のバス停で乗って来ること、駆け落ち中のお嬢様とガタイの良い男が乗っていること、探偵と警察関係者が乗っていること、だ。 警察が乗っている、という情報は大きい気がする。警察が乗っているのだから、犯行を続けても無駄ですよ、という抑止力にすることはできないだろうか。 いや、審判から「それ反則」と注意されて大人しくプレーを止める選手のように、犯人がいう通りにバスジャックをやめてくれるとは考えにくい。 だが、俺にできることはまだあるはずだ。 営業スキル、根回しを今度は運転手に行うことにする。 バスに乗り込み、運転手に「すいません、港の見える丘公園前の交差点で、急ブレーキ

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#8-5周目 元警官は目元を覚えて邪魔をする|henshu_ckr
    henshu_ckr
    henshu_ckr 2018/02/18
    本日8話目! リープも5周目。4周までのリープ体験をもとに、乗員乗客に協力を呼び掛けた主人公。その結果は…覆面編集者大賞受賞作家、如月新一がお送りするタイムリープ・スペクタル!次回更新は2/22夜!
  • 如月新一×覆面編集部載記念トークショー|henshu_ckr

    1月27日にでおこなわれた「爆破ジャックと平凡ループ」の連載トークショーの生配信!みなさんご覧いただけましたか? 「見逃しちゃってたんだよね!」「最近連載小説を読み始めた!」という方になんと録画映像をお届けいたします! ・動画視聴ページはこちらから! https://youtu.be/iTvLHP96c0k 連載になる前の覆面編集者とのやり取りや、如月さんの小説へのアツい想いが映像でも伝わってきます! ぜひご覧ください! これからもヒートアップする「爆破ジャックと平凡ループ」応援よろしくお願いいたします。 『爆破ジャックと平凡ループ』好評連載中! 毎週木曜・日曜の夜更新予定。今からでも1話目から読めます! https://note.mu/henshu_ckr/n/nbb4210ac0b26 #小説 #コルクラボ #覆面編集者 #如月新一 #爆破ジャック 『爆破ジャックと平凡ループ』感想&イ

    如月新一×覆面編集部載記念トークショー|henshu_ckr
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    henshu_ckr 2018/02/18
    第8話公開記念!先日BOOK LAB TOKYOで行われた「爆破ジャックと平凡ループ」作者の如月新一さんと担当編集ツッツーのトークショー動画も公開!創作志望者、そして第3回覆面編集者大賞に応募ご検討中の方は必見です!
  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#6-3周目 信じるなら今ですよ|henshu_ckr

    「動くな! 動くとこの女を殺すからな!」 そう言いながらバスジャック犯が咲子さんを引きずるように歩き、運転席の隣まで移動する。 「いいから、バスはこのまま走らせてろ」 運転手への命令を聞き、このままだと一周目と同じく、桜木町駅で爆発してしまうぞ、と内心で舌を打つ。 「お前、なんでバスジャックが起こるって知っていたんだ? あいつの仲間なのか?」 「まさか。あの人質になっているのは、俺の元恋人ですよ」 「だったらなおのこと、グルなのかもしれないじゃないか」 「確かに」と苦笑し、「いや、彼女のことは少ししか恨んでませんよ」と返す。 「少しは恨んでるんだな」と探偵が苦笑した。 俺は話すか話すまいか躊躇したが、どうせ話したところで信じてもらえないだろうし、と思って口を開いた。 「実は、このバスに乗るの三回目なんですよ」 「あかいくつバス、にか?」 「そうじゃなくて、この同じバスです。タイムループ? 

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#6-3周目 信じるなら今ですよ|henshu_ckr
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    henshu_ckr 2018/02/11
    本日6話目! 3周目にして主人公は、リープする世界線に協力者を作れるか?覆面編集者大賞受賞作家、如月新一がお送りするタイムリープ・スペクタル!次回更新は2/15夜!感想お待ちしています!#コルクラボ #小説
  • 如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#5-3周目 探偵のお仕事は|henshu_ckr

    十二月の風が吹き抜け、体がぶるっと震えた。コートを着ていても、まだ足りない寒さだ。 あれ? 熱は? 爆発は? と目を開けると、そこには、あかいくつバスが停まっていた。運転手が、「乗るの? 乗らないの?」という視線を俺に向けてくる。 さっき、バスは爆発したはずだ。それも、二度もだ。 俺はセールストークを使って犯人に立ち向かったが、失敗した。 なのにまた、バスに乗る前に時間が戻っている。 俺はバスに乗り込み、パスケースをタッチして金を払う。 車内を見ると、やはり見知った面々が乗っていた。 まさか、また繰り返しているのか? ゲームのコンティニューのように、やり直しが何回か許されているとでもいうのだろうか。 誰のなんの意思で、俺はこんな能力に目覚めたのだろう。どうやったら、繰り返しから出られるのか、そもそも命が助かるのか、と不思議に思いながら歩を進めていると、咲子さんの隣の席に向かう途中で、菜々子

    如月新一「爆破ジャックと平凡ループ」#5-3周目 探偵のお仕事は|henshu_ckr
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    henshu_ckr 2018/02/08
    本日5話目!バスの乗客の素性が少しづつ明らかに! 探偵が乗っていることがわかったが、名推理で事件は解決するのか⁉次回更新は2/11夜!感想お待ちしています!#コルクラボ #小説 #爆破ジャック