バスジャック犯、岡本のリュックサックからは、爆弾ではなく葉っぱの詰まったジップロックが散乱した。おそらく脱法ドラッグだろう。 それを見下ろす岡本が大いに落胆するのを見て、俺はどういうことかと首を傾げる。 バスに乗り込んで来た時、岡本は俺が滑川なる悪党の手下なのではないか、と心配していた。 「いっつもこうだ、チクショウ。オレは肝心な時にやらかす」 バスジャック犯の、弱々しい声が漏れ聞こえる。 もしかして、と俺は想像を巡らせ、口を開いた。 「もしかして、取引の横取りをしたんですか?」 目出し帽の間から覗く瞳が俺を見据える。わずかに潤んでいて、あぁその通りなのだな、と予想が確信に変わった。 「脱法ドラッグの取引があって、現金を奪うはずが、間違ってドラッグの方を奪って来ちゃったんですね」 「ちゃった、とか言うんじゃねえよ。恥ずかしくなるから」と岡本が弱々しく漏らす。 手術代金を、違法な取引から強奪