著作権を譲渡する契約において,「翻案権も譲渡する」と明示していなかった場合に,著作権法61条2項の推定を覆すことが出来るかどうかが問題となった事例。 事案の概要と争点 本件事案は,複数の訴訟を経てきているので,非常に複雑であるが,簡単に本件訴訟に関わる部分だけ簡素化すると,次のような事案である。 通信機器,計測機器の販売等を行うXが,電気・電子部品の販売等を行うYに対して,Yのシステムに組み込まれているプログラムは,もともとXが開発したプログラムを翻案(改変)したものであるとして,差止と損害賠償を求めたものである。 当初,YがXに委託して開発したプログラムの開発委託契約には,開発過程で生じる著作権についてはYに帰属する旨が書いてあったが,翻案権(著作権法第27条)については書かれていなかった。 ここで前提として,著作権法61条2項について触れておく。同項は, 著作権を譲渡する契約において,