初対面の人と二人きりで話すという機会はあまりない。 「普段どんなお仕事をされてるのですか」 ──もし訊いても良ければ。そう遠慮がちに言い添えた彼は、コタツを挟んで斜め向かいから好奇心旺盛な目でこちらを見ていた。 「プログラマですよ」 そう答えてから、それが十分な情報にならないことに気づいて、「Webアプリケーションとかを作ります」と慌てて付け加えた。とはいえ、それでも大した情報量ではない。 彼はそれを聞いて感心したような表情を作ってからもまだ何か僕の言葉を待っているような様子だったが、僕がそれ以上は口にしないのを感じ取ると言い訳するように言った。 「いや、平日に急に三連泊なんて珍しくて」 その日唐突に山口県の萩市を訪れることにしたのに大した理由があったわけでもない。この町は吉田松陰や高杉晋作のふるさととして知られる。今も古い城下の残るちょっとした観光地だが、日本海側に面しており新幹線の停車