(柳原三佳・ノンフィクション作家) 正月休みもあっという間に過ぎてしまいました。でも、1月11日の「鏡開き」が終わるまではお餅を食べ、もうしばらく正月気分でいたいですね。 「全国餅工業協同組合」のサイトによると、“餅”は、奈良時代に編纂された『豊後国風土記』(713年)という書物の中に、白鳥の化身として登場するのだとか。以来、白い餅は縁起のよい白鳥のイメージと共に、「神秘な霊を宿すもの」と考えられ、ハレの日(お祝いのある特別な日)には餅をお供えし、食べる習慣が広がったそうです。 日本人と餅のかかわりには、長い歴史があるのですね。 万延元年遣米使節団、「黒船」の甲板で餅を焼く 一方、餅は「お供え」という縁起物のほか、長旅における「保存食」としても珍重されてきました。 本連載の主人公である「開成を作った男・佐野鼎(さのかなえ)」が幕末に記した『訪米日記』の中には、万延元年遣米使節(万延元年遣米